[命運を握る夢]
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その日何事もなく夜勤を終えて、自分のアパートの部屋に戻って
疲れからが爆睡した時に夢を見た。
その夢はAさんが病院の屋上から落ちそうになってて
私の手にぶらさがってる。最初はなんとか持ち上げられそうだって
思ったんだけど、よく見たらAさんの足にたくさんの人が群がるように
くっ付いてるのが見えた。
Aさんは「死にたくない、死にたくない」って言いながら
必死に足をバタバタさせてもがいてる。
だんだん腕にかかるAさんの重さが増してるのか、
腕がちぎれるんじゃないかって思うくらい痛むんだけど
Aさんを離したら死んでしまうって思いが強くて
なんとかAさんを引き上げることに成功した。

Aさんの足には何もついてなくて
病院の屋上から下を覗いたら真っ暗で何も見えない。
怖くなって病室に戻ろうって思ったら病院の下からものすごい突風。
耳元でたくさんの声が混じったような、ドスの聞いた声で

「余計なことするな」

って言われて目が覚めた。
じっとりと嫌な汗を全身にかいていてシャワーを浴びていたら
右手にじんわりを違和感を感じて、見てみたら手首の所に人に掴まれたような痣。
クッキリと残ってる。

Aさんが心配になって、身支度もそこそこに病院に向かって
Aさんの様子を看護士さんに聞いたら
夕べ一回危篤状態になったけど、持ち直したとの事。

ホッとしたと同時にあの声の主のこととか思い出してガクブルしてたら
日勤終わった看護士さんが、ご飯おごってあげるからおいでって。
考えてみたら、夜勤バイトの時の差し入れ弁当から、何も食べてないことに気付いて
ついてく事にした。

その看護士さん(仮にIさんとしておく)が個室の落ち着いた雰囲気の居酒屋に
連れてってくれたんだけど、すごく神妙な顔つきというか
ベラベラしゃべるでもなく、注文してしばらくはツマミ食べながら酒飲んでてさ
こっちもヘンダナーとか思いながらも、黙々と食べてたのね。
んでお腹もいっぱいになって、フー・・・って一息ついた頃に
Iさんが話し始めたわけよ。

「もしかして、変な夢みなかった?」

かなりビビってさ、もしかしてIさんも見たことあるのかって聞いたら
Iさん顔面蒼白になりながらも頷いてる。

「あたし・・・患者さんの手離しちゃったんだ・・・」

Iさん泣きながらそう言うんだよ。その患者さんは亡くなったそうで
Iさんは毎日後悔したそうだ。
それ以来、何度も夢に患者さんが出てきて、Iさんにすがりついて
「助けて・・・助けて・・・」
って繰り返すそうだ。その患者さんの足には沢山の人の影がまとわりついていて
Iさんの患者さんを引き込もうとしているようだと。

私は身震いした。あの時Aさんの手を離していたら・・・・。

後日談。


自分は看護士になるの諦めて、短大卒業した後保健士の資格取るために
専門通ってる頃、当時同じ短大通ってた同級生がその病院に勤めて
その子から聞いた話。
Iさん自殺したそうです。

私が短大在学中にすでに精神的におかしくなったらしく
退職して、精神科に入退院を繰り返すようになってしまったみたいで
うわ言みたいに「あたしは悪くない」って繰り返してたらしい。
最後は病院からの投身自殺だったようです。

ちなみにAさんは元気で毎年年賀状がきています。


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