[車椅子に座るモノ]
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思わず後ずさって、だけどちょっと気に掛かったんでよく見てみたんだ
そしたら・・・・たしかに小さい文字で『助けて』って書かれてた
だけどその字の上に重ねるように『助けて』って書かれてて
またその上に『助けて』って書かれてた・・・
それがいくつもいくつも上書きされて壁が真っ赤に塗り潰されてるってことに気づいた
恐くなってでも目を背けられなくなってて・・・・
そしたらね
キィ・・・・って音が近くから聞こえたんだ
横にはさっきどかした車椅子があるはずで・・・・
しかも縦に置いたからこっちを、おれをに向いてるように置いてある
左を向けば車椅子が置いてある
だけどそれを確認するのが恐くて・・・・でも赤で塗り潰された個室を見てるのも
すごく恐かった・・・・
だから俺は意を決して
左を、車椅子のあるほうを見た・・・・
一瞬・・・・赤い染みがいくつもある服を着た看護婦さんと
真っ白な服を着た子供が車椅子に座ってるような錯覚を覚えた
一瞬本当にいたのかと思った
だけどそこには車椅子が置いてあるだけで
風も入り込んできてないし、その車椅子が動くこともなかった
それでも俺は恐くなってトイレを飛び出して怪談を駆け下りて一階に戻った
そこで変な音を聞いたんだ・・・・
その音が聞こえたときは階段を下り終えたばかりで、階段のすぐそばにいたんだ
そこでね上の方からガタガタ!ガチャン!!って音がしたんだ
何かが崩れたような落ちたような音
俺はすぐに車椅子を連想してしまった・・・・
でもそれとは別の音が外から聞こえた
ちょうど庭のある方角から・・・・
気になって外に出て庭の方に回り込んでみたんだ
だけど何もいない。当然だ、ここは立ち入り禁止だし
いるとすれば俺のような何かの目的を持ってきた人以外ありえない
それで庭から俺のいた病室あたりとトイレのあるあたりを見てみたんだ
そしたらねなにか・・・・人みたいな何かが上から落ちてきた
一瞬人かと思った。だけどそこから動けなくて、それが落ちるのをずっと見てた・・・・
鈍い音がして、それで俺ははっとして落ちたところに駆けて近づいた
人だったら大変だ。なにより投身自殺したという前例があったからもしかしたら・・・
そう思って近寄ったんだ
だけどそこには何もなくて
近くを探したけど何もなくて
音がしたはずなのに何もなかった
それで俺はいやな気分になって、気持ち悪いって言うのか・・・・
胸の辺りに蛇が這ってるようなそんんば気持ち悪さがしてて
別館を後にして本館の方に歩いてたんだけど
時々別館の方を振り向いた
一回、二回、三回ほどだったろうか?
誰かがいるような・・・・誰かが見てるようなそんな気がしたんだ
それで何度か振り向いた
だけどそこには誰もいなかった・・・・・
ちなみに帰りにも本館によって俺が来る前に来た人はいましたか?
と聞いてみたが、その日、最初に来たのは俺だったらしい・・・・