[徘徊]
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気づいたら家の前にいた。
さっきまでの記憶はある。何故あんなことしたのか解らない。
そのまま俺は静かに家の中に入って眠りについた。
朝。目覚めると妙にダルイ。脚の傷が多くなっている。
「うわ、またできてる」と思い、瘡蓋をカリカリやってると
急に変な音が響いた。
「ギシッ」とか「グギギギ」とか、そんな類の音だった。
俗に言うラップ現象と言う物だろうか。
別に変わった体験なら小学生の時に充分味わっていたので
そのまま無視して学校へ行った。
だが予期せぬことが起きた。
学校では頭痛が止まない。それに視線を感じる。
嫌な汗もかきまくる始末だ。
そして家に帰ればまたラップ現象が待ち構えている。
耐えに耐えかね、一週間が過ぎようとしていた。
そんな時、夢の中で見知らぬオジサンが出てきた。
俺は椅子に座っている。目の前にオジサンは腰掛けると
「お前もうまくやられたもんだな」と言われた。

なんのこっちゃ?と思っていると、
「安心しろ、別にお前の代わりなんていくらでもおる」
と言って、オジサンは急に立ち上がった。
「あっちだってお前がそんなことしたことを不思議がってる
 んだ。悪気がどうのこうのより、いきなりやられりゃぁ、
 そりゃ誰でも怒るに決まっとるさ」
そう言ったオジサンは少しずつ消えていった。
朝。妙に気が晴れていた。脚を見ると何故か傷が減っていた。
朝食を食べながら夢の事を思い出していた。
あのオジサンの顔。よくは見ていなかった。
けどあの眼鏡顔、何処かで見た事がある気がした。
「それじゃ、行って来るぞ」と、父が出て行こうとしたとき。
そうだ、父の顔にそっくりじゃないか。
俺は学校から帰ってくると婆ちゃんに爺ちゃんの写真を見せてくれと
頼んだ。写真を見るとやはりそうだった。
あのオジサンは爺ちゃんだったんだ。
俺は婆ちゃんにこの一週間の事、そして夢のことを話した。


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