[深夜の公園]
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まあイチョウの木は今回の話では関係ないんですが
トイレはコンクリでできた典型的な公衆トイレです
近くには今にも消えそうな街灯が橙色の鈍い光を発しながら不気味に瞬きしています
壁のペンキは剥がれて灰色の地肌がむき出しになっており
汚いんだろうなー臭いんだろうなーと思いつつもトイレの中に入りました。

トイレは小便器が2つ、便器の上に水道の蛇口がついている古いタイプの便器です
その反対側に用を足す部屋があります。中はかなり汚い様子でした。
トイレの中はひんやりしているせいか、あまり匂いは気になりませんでした。
ただトイレの中は完全なる静寂の世界で、木々の葉が擦れ合う音すらしない無音の世界でした。
それに加えて大の個室のほうはトイレの中の電球の光が届かず
壁についているA4用紙サイズ程度の小さな出窓からほんの僅かな外の光が入ってくるだけです。
トイレの個室はまさに静寂・闇・密室の3条件がそろっていて、心臓が弱い人は発狂してしまいそうなところですが、
私はただひたすら心を無にして、体の中の黄金棒を排出しました。

出すものを僅か10秒で排出し、公衆トイレでは希少な紙を尻にあてがった瞬間
なにやら「アァァァ…」と初老の男性のかすれたうめき声が聞こえるのです。
まるで声を出したくても言葉にすることができないような声がはっきりと聞こえました。
軽くびっくりした私は、恐怖を覚えて急いで尻を拭きズボンを上げるために立ち上がりました
私が立ち上がるとちょうど私の頭の位置には先ほど言った出窓があります。
そう、さっきの男の声はその出窓のところから入ってきた感じなのです
何か気になったので、その出窓の外にチラッと視線を移しました。

出窓から広がる景色はすぐそばにサクラの木が何本かあり、
サクラの木の向こうには雑木林が広がっています。
その雑木林のところに白いもやーっとした塊があるんです
見たのはほんとに一瞬3秒くらいだと思いますが
その白いもやは明らかに煙ではなかったです
人型にも見える感じがしたのですが、
そのときはすごくびびってたので
とにかくその場から離れようと思ったので、これ以上窓の外は見ていられませんでした。
ただ窓の先には雑木林のところで人型の白いもやが中に浮いているのは間違いなく確認できました。
とりあえずその日はダッシュで家に帰り、その後も特に変わったことは何も無かったです。

これは後日談です。私がした怖い体験を大学のサークルでの怪談話でネタにしたところ
それ系にめっぽう詳しい友人が
「あそこの森林公園は少し前までホームレスが住み着いていたんだけど、
 そのホームレスが2年位前に首吊ったらしいぜ」
と言っていました。
私は「いやホームレスでもあんな夜は君が悪い公園なんかに普通寝泊りするか?」と反論したが
友達は「お前が見たのは首吊ったホームレスの霊だったんだろ。実際にお前は見えたんだだろ」
といわれるとこれ以上私も反論ができませんでした。

もしかしたら漏れがみたのはホームレスの自爆霊だったんですかね(((( ;゚Д゚))))


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