[図書館にいるモノ]

これはつい先週あった話です。
ようやく気持ちが落ち着いたのでひとつ書いてみようと思います。
自分は大学4年生でとある私立大学の図書館でアルバイトをしていました。
地下1階と地上2階まである結構出来のよい図書館で、深夜の職員がいない時間帯に貸し出しや整理をするのが仕事でした。
テスト時期や卒論の〆切りが迫る時期はともかく、日頃は夜8時を過ぎるとガランと静まり返り、特に地下フロアは節電のためにエアコンを切ったりしているときには何か薄気味悪い感じを受けました。
私達は毎週交代でこの地下フロアに返却と整理を行うのですが、どうにもいつも誰かに見られているような、誰かがいるようなそんな気がするのです。
特に集密書架と呼ばれる電動式で動く棚のある場所に行くと、まるで本全てが私を見ているような、そして棚と棚の間から誰かが私を見つめているような、そんな気になります。
本当に稀に現れる集密書架の利用者にばったりあうと、思わず息が止まりそうになりました。

この図書館ではよく不思議なことがあり、本を送るためにあるエレベータが夜には閉鎖してある2階に行っていたり、椅子がとんでもなく遠い場所にポツンとおいてあったり、開けた記憶のない窓が開いていたりすることが度々ありました。
私達は利用者がやったものだと思い指して気に止めたりしなかったのですが、7月を境に私はそれらに対しての認識を改めざるをおえませんでした。
7月の中旬。いつものように地下の業務に向かうと、集密書架の棚の上から白い手が数本、まるで何かを掴もうとしているかのうようにわらわらと動いているのです。
え!?と思わず凝視するとそれはふっと消えてしまい、始めは目の錯覚が疲れているのだろう。
そう思って済ませていました。
しかしそれからはそれらが度々見えるようになり、もうそんなことは言ってはいられませんでした。
本を整理していると本と本の間から誰かの顔のようなものが遠くの棚から見えたり、足音がするので誰か来たのかな?と思ったらどこにもいなかったり、あるときには本を降ろすためにエレベータを使おうとしたところ、
エレベータの僅かな隙間から、真っ黒い闇の中で目だけがじっと私を見ていることがありました。今でもその光景を忘れられそうにありません。それからというもの私はエレベータから本を出し入れする際、
重い扉をそぅっと持ち上げて、常に後ろに逃げる体勢を撮とるように心がけました。
私はそれらのことを実害がないのだし、言ったらきっと笑われる。と思い今までアルバイトを続けていましたが、ついに先日命の危険を感じるような出来事が起こったのです。
私にとってそれはもうトラウマとなって心に深い爪痕を残すこととなったのです。

先週の水曜日のことでした。
私はいつも通り集密書架の本を返却していました。その日は一段と「感じる」ようで、どうにも纏わりつくような視線に耐え切れず、
早く終わらせて戻りたい。戻りたいと手早く整理を済ませていました。
すると足音が聞こえてきたのです。少しづつ近づいてくる足音に私はきっと誰か来たに違いない。
とほっと胸をなでおろしたのですが、それが皮肉にも恐怖の始まりとなるのでした。
集密書架はABCDと分類されており、それぞれ20程度の棚がありボタンを押すことで棚が動いて、本を閲覧するスペースが生まれます。
各書架につき1つしかスペースが作れないので、もし整理中に利用者がきた場合には
私達は一度作業を中断して別の書架に向かわなければなりません。
そのため私はこれから来る人がこの場所の利用者だったらと考え、手を止めて通路側を見ていました。

続く