[目を見るな]
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「あの子(こないだ知ったんだがMは霊とかを「あの子」って言う)達の中にも
種類があってこっちにアピる子とアピらん子がいる。そんでそのアピる子の大半は
目を見てくる。勿論目なんかないようなグチャな子もいるけど」そこまで言ってMは
自分の目を指さした。「目ってのは脳の一部だろ。元々動物ってのは
脳が重要なわけだが死んじまえば脳だけになるようなもんなんだ」
ホホウそれは初耳だ。と感心しつつも
やっぱり電波っぷりにちょい右から左ぎみだったわけよ。
しかし突然Mの話が変わった。
「今まで見覚えの無い人間にやたらマジマジ見られた事あんじゃね?」うん?
見覚えの無い人間に「気をつけろ」言われた事はあってもそんな体験は…あった
っつーかそれくらい誰にでもあるもんじゃないのか
それは去年の冬。学校帰りにラッシュに合って座る事も出来ず
もみくちゃになっていた時の話だ。
いきなり手を握られた。オワア痴女か?!痴女なのか?!と少し期待する俺
しかし苦しい車内の中で俺の手を握れる位置にいる女性は明らかに
手が塞がっている。大体の位置を予想して顔を見ると男(゚Д゚≡゚д゚)エッ!?
人違いされとる?!俺の前にいる可愛いOLさんと勘違いしとる?キモ!
とか思って手を振り払おうとするが狭くて上手くいかない
しかも2度目に顔を上げるとかなりの至近距離(間に可愛いOLさん/かなり小柄)
で超凝視してくる。

ウホか!ウホなのか!と焦りつつも必死に自分に最近髪切ってねえしもしかしたら
ゴツい女だと思ってるのかもしれんしな。人の好みは人それぞれだし
なんて言い聞かせた。そのまま下車駅までがっちり手を掴まれていたんだが
それよりも視線が不気味だった。あんな至近距離(推定30センチくらい?)で
他人に凝視されるなんて体験した事が無かった。世の中にはそんな人もいるさと
心の広い俺は家に帰って妹に話したりして笑い飛ばし、その日まで忘れていた。
「いやー見られるくらい誰だってあんだろうよ。知り合いに似てたり」
とか言い返している時にマイナー雑誌の置いてある書店の最寄駅に到着。
「あんまり間近で見られてたら気をつけたほうがいいかもな。
2回目は洒落にならんぜ」とか満面の笑みで言ってきやがった。
ぅおい!俺これからその線に乗って学校に行くんだけど?!
なんて問い詰めてもMはニマニマ笑うだけで答えない。
気付かずに1年使ってたんだから大丈夫だとは思うが…
これからは何があっても満員電車で
目の前の人間の顔を見ないようにしよう…と心に決める俺。
そういや握られてた手が満員電車だったのにやたら冷えていたなとか
思い出さなくていいことまで思い出してしまった

ついでに俺が心に決めている間に某雑誌最後の一冊はMに買われましたとさ


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