[おーい]
前頁

窓の外は安全の為か鉄の柵がついている。
一度試したことがあるが、外から一階の柵によじ登って二階のこの場所まで来ることは可能だった。
泥棒か、のぞきか…
人であって欲しいと心から願った。
が、ふと思った。
隠れるとしたら下に身を伏せるなり、飛び降りるなりしないだろうか。
…柵は窓の前にしかついていない。
横は………無理だ…。捕まる場所がない。
そう考えながらも既に木刀の先で窓を数センチ開けてしまっていた。
ワザと大きい音をさせながら、一気に窓を全開にし、木刀を持った手だけ外にだしてがむしゃらに木刀を振り回した。
手応えなし。
腕を引っ込める。
塩のせいで足の裏が痛い。

木刀には何も当たらなかった。オレはそれが確認できただけで少しホッとした。
が、それ以上の確認の仕方はしたくなかった。
いずれにしても追っ払った。そう思った。

窓を半分ほど閉めたとき、外に何か見えた。手が止まる。
この窓から外を見下ろすと、右斜め前に駐輪場が見える。これまたボロい。
その駐輪場はコンクリートでできた長方形の倉庫と一体になっている。その側面。
頭が生えてた。90度横になって。鼻から下半分はコンクリートに潜っている形。
暗い街灯に照らされていて男だか女だかもわからなかったけど、確実にオレを見てた。妙に自然な感じがした。
(見ちゃったな…)
と思った。それ以外何を考えてたか忘れてしまったが。

「どうしたん?」
心臓飛び出る思いで振り返ると母がいた。

母にビビりながらもまた外を見る。
まだ居る。
「何こぼしたん?コレ…」
いいから!ちょっ…!外見てみ!チャリ置き場みてみ!!と、ジェスチャーで伝えるオレ。
母は眉にシワ寄せながら窓を全開にして外を覗いた。
しばらくキョロキョロした後、固まる母。
「なっ!?見えるだろ!?」
返事もせずに静かに窓を閉め、カーテンを閉める母。
「いるんだねぇ、ああいうの…」
間違いない。居るんだ。幻覚じゃない。母により確信した。
思いついた様な顔して母「あんたさぁ、さっき外行った?」
…は?不意の質問。
「何それ。どういうこと?」
母「さっき、あんたの声で玄関から『行ってきます』って聞こえたんよ。いつの間に玄関いったのかと思って見に行ったんだけど…靴あるし、変だなぁと思ってこっちの部屋来てみたん」
そしてオレに声をかけたらしい。

その日は二度と外を確認する事なく、母もオレも寝た。ちなみに姉には内緒ということで。ビビりなんで。

次の日、元気なガキんちょ達の遊ぶ声で目が覚めた。…窓が開いていた。母が開けたのだろう。

外へ確認しにでる。階段の踊り場から駐輪場を見るが、…何もなかった。結局何もかにも謎だらけ


この一件により、オレと母は霊の類を信じざるを得なくなった。

今はもう社宅は取り壊されてしまったので、何も確認しようがないんですが。


次の話

Part145menu
top