[白い紙]

前頁
そこには確かに自分の部屋が写っていた。そして冗談でもなんでもなく、自分の部屋にいた女の姿も・・・
いわゆるブ女。見れたもんじゃない体型に、ビチビチのジーパンとTシャツ。
そして、何故かぼやけて良く見えない顔。
Iが無言で次々と画像を送っていく。
廊下から出てきたそれが、自分の部屋をぐるぐると、何かを探すように回り、そして引き出しからボールペンを取り出して
置いたあと、満足そうにさっていく様子が。
「分かったろ?まじでいたんだよ。とにかくおまえはもう家に帰るな。今までは平気だったけど、これからも何もないって保証はどこにもないぞ?」
恐怖で泣いたのはこれが生まれて始めてだった。
体がガクガク震えて、顔が熱くて溜まらない。失禁寸前のところでIに支えながらトイレに連れて行ってもらい、そこで喚き散らした。

一暴れして落ち着くと、Iはこういった。
「まぁ、あれだよ。こういうのはマレにいるんだ。そういうことにしとけ。
これはこの家から出てくることはないはずだから、おまえはもう家に戻るな。
で新しい家を探せ。その間くらいはこっちで面倒みれる。
新しい家見つかったら、俺とKで引越し作業するから。それでいいだろ?」

翌日のバイトは休みをとって、自分は不動産屋を駆け巡った。
もう怖くてしょうがなく、一秒でも早くあの家から縁を切りたかった。
幸いにも午前中には契約が取れて、午後には向こうの家の解約手続きに踏み切ることができた。
何か問題でもあったのか?とやたらとしつこく聞かれた辺り、こういうことは始めてだったのかもしれない。
とにかく今よりいい条件の家を紹介されたから、先着だから時間がなくて思わずそっちに申し込んだ。
といって何とか切り抜け、2日後には引っ越すことができた。
その間何の問題もなく、突然引越しの手伝い(しかも当の本人が不在)で一日をフイにしたKも
多少モンクはいいつつも特に問い詰められることはなく、無事にあの家から離れることができた。
新しい家に変わってから、しばらくはビクビク怯えていたけど、何事も1週間も過ぎるとようやく調子を取り戻してきた。

それから少し経って、再びファミレスで集まることになり、Kにようやく今まで起こったことを説明した。
Kは学校で怖い話(SFC)を本当にあった話だと信じてしまうような人間なので、むしろ
「それヤバクね?」「次は俺らがのろわれるんじゃねーの?」
とかいちいちこちらを不安にさせるようなことをいう。
そんなときにIが一枚の紙をテーブルの上に置いた。
「この紙、なんだかKは分かるよな?」
「ああ、引越しのとき机の上においてあった奴でしょ?」
「これさ、真っ白い紙に見えるけどよくみると文字が書いてあるんだよ」
Iはもう一枚似たような紙を取り出すと、さっきの紙の上に重ねて、バッグから取り出した鉛筆でガリガリ擦り始めた。
そうして出来上がったものは
『さびしい、いたい、さびしい、いたい』
そんしばらく続いてたが単語がノートの半分を過ぎたあたりで
『さびしい、いない、さびしい、いない』
に変わり、最後のほうになると
『しね、しぬ、しね、しぬ、しね、しぬ』
見ていて頭が痛くなるような文に変わっていた
最初のほうは薄くて全部は読めないものも多かったが、最後のころにはしっかりと文字が浮かび上がっていた。
「一応調べてみたんだけどさ、あのアパートで死んだとか自殺した。って奴は新聞とかネットではいなかったよ。
あいつが何だったのか?って聞かれると困るけど、多分Dと馬が合ったっていうのかな?多分そんな感じだと思う。
事故みたいなもんなんだよ。きっと。」
それから誰が言ったわけでもなく、三人ともその話を止めてカラオケに行き、3人でまた一晩泊まって終わった。

あれから今まで、何の問題もおきてない。
Iが一度だけ、詳しくその手に関する話しをしてくれたけど、これ以上長文はうざいと思うのでここで終わり。
最後まで付き合ってくれてありがとう。


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