[夕美さん]

私は彼氏とハイキングに行った。
お金も無く、とても暑い時期だったので涼しい山でも行こうか、と。
山登りで多少体温が上昇すると思っていましたが、山は意外に涼しく快適温度。
傾斜もゆるかったので楽しく話をしながら山頂を目指した。


「やっと山頂に着いたね〜」
「傾斜がゆるかった割には妙に疲れたなぁ」
「もぅ、運動不足なんじゃない?」
そんな会話を交わしていました。

「すいません、写真を撮ってもらえますかぁ」
前髪を横分けにした綺麗な茶色がかった黒髪でロングヘアの女の人が声をかけてきました。綺麗な人だなぁ。
女性は1人でした。
「はぁい。いいですよぉ〜」
私は女性が1人だということに注目している事がばれないように陽気な声で話した。

カシャ

フラッシュとともに女性は笑いました。
「撮ってもらうだけでは悪いので・・私もお撮りしましょうか?」
「それじゃあ、お願いしようかな?」彼氏が私の方を見ながら言った。私も頷いた。
何故か私はその女性とカメラを撮るだけの縁なのはなんだか勿体無いような気がして、持ち前の好奇心で話しかけた。
彼女は後ろの景色を見ていました。
「ここにはよく来られるんですか?ん〜!!綺麗な景色ですね〜」伸びをしながら言うと
「そうですね〜。久しぶりに来ましたけど涼しくて快適です。」
「天気も良くて・・ん??なんか曇ってきたなぁ??」

「お〜い。なんか曇ってきたから降りようぜー」
その辺でカマキリと戯れていた彼氏が言った。

案の定10分後には雨が!

私たちとその女性は結構きつい雨の中一心不乱にふもとを目指した。
「びしょぬれになりましたね〜」長い髪をかきわけて女性は言う。
さらに「あの、ふもとまで何で来られたんですか?」
「バスです」彼氏が先に言った。
「よろしければ送りましょうか?どうせ今日はもう少し山に登ろうと思っていたんですもの、時間が余ってしまいましたのでどこへでも送りますよ。」
彼氏と私は顔を見合わせて笑った。
「遠慮なさらずに・・」
「そ、それじゃあ頼みます。。すいませんねぇ・・・本当に」私は本当に申し訳なかった、が彼氏は露骨に嬉しそうな顔をしている。


車の中でいろいろな話をした。
親切な、女性の名前は川橋夕美さんというらしい。
夕美さんは私たちの最寄の駅と二つ違いの駅前に住んでいる。
意外に近いんだな、と。
うえから593と594の間
数日後、私は電車で二つ目の駅に行った。
夕美さんにあの時のお礼をするためだ。
駅前と言っていたからすぐに見つかるだろう。
駅から5分程の所に川橋、と書いた表札があった。
「こんなに早く見つかっていいのだろうか・・」
思わず独り言をもらした。

ピンポーン

「はーい」ドア越しに夕美さんの声が聞こえる。良かった。この家だ。
「あ、この間の・・・。」
「お邪魔だと思ったんですけど・・お世話になったので・・これ・・」
「わざわざありがとうございます。狭い所ですけど、お上がりください」

・・・・・・・・・
「あ、これ、この間の写真ですか?」
「はい。そうですね、1人で寂しいですけど。あは」
「そんなこと無いですよお。一人でも十分絵になりますよ?」
「・・・・・本当は彼氏と行きたかったんですけどね。事故であっけなく死んでしまって。」
「え・・・、そうだったんですか・・・」夕美さんが本当に悲しそうに言うので私の目にも涙がたまってきてしまった。
「あは、すいません。こんな話してしまって。」
「いえ、私でよければいつでも聞きますよ!」
「ありがとうございます」

続く