[リリヤンのブレスレット]
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時間だけはたっぷりある。だから彼女はじゃあ一緒に散歩しよっか?と女の子の手を引いて石段を降りようとするんだけど、
女の子は首を左右に振りながらいやいや、と無言でぐずる。
「・・・・・・神社で遊ぶの?」
こく。首が縦に振られる。
「神様に、怒られない?」
こく。
「そっか。じゃあ、何して遊ぼうか?」
彼女が言うと、女の子は顔を綻ばせて彼女の手を引っ張りながら杜の中を色々と案内してくれた。
先程彼女が行くのを止めた所にも、見落としていた所にも。その中の一つ、神社の裏手にひっそりと建っていた古いお堂の中からは
女の子の宝物なんだろうか、鞠やらリリヤンやら、古めかしい遊び道具が沢山という程ではないにしろ出てきて
彼女を驚かせたのだった。しかしここは田舎。彼女の父親がまだ小学生だった頃のおもちゃが当時のままの値段で今も売られている
場所なのだ。一度母や祖母に教えてもらっていたのでその成果を試すとき、と言わんばかりにリリヤンを長く作ってやると
女の子は大喜びしたそうだ。心のどこかが柔らかくなる、そんな逢瀬だった。
ぽっかりと口のあいた斜面に寝転がって日向ぼっこもした。二人だけどかくれんぼもした。あやとり、手遊び。
はっ、と彼女が我に返ったのはポケットに入れっぱなしの携帯がぶるぶると震えた頃だ。
着信を見ると母親から。通話にするなりいきなり母の怒声。
「何時だと思ってンのよー!どこにいるのアンタ!!」
「いやいや、何時ってまだ散歩出て一時間もたってな・・・・・・・・・」
彼女の言葉はそこで途切れる。見上げた空、鎮守の杜の隙間から見えるのは青空ではなく見事な茜色。
照り返しも白からオレンジに変わっていた。慌てて液晶を見ると------------------ゲッ、6時!?
全然気付かなかった。8時間ブッ通しで女の子と遊んでいたのだ!なんでお腹がすかないの!?と見当違いの事を考えた彼女は
とりあえず親に謝ってすぐ近くにいる事を伝えてから電話を切った。女の子は鞠を持ったまま彼女を見詰めている。
白いワンピースは太陽に染まってクリーム色のようになっていた。
「えー・・・・・・と。ごめんね、そろそろ帰らなくちゃなんなくって。」
こく。
「私と遊んで、楽しかった?」
こく。