[バス停の女]
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部屋に入ってから孝史は美保にお風呂に入る事を勧めた。
ほどよく細い身体のラインといい、顔立ちの幼さも孝史の好みに合っていた。
お風呂上がり、美保は何の躊躇もなくバスタオル一枚で出てきた。
脱いだ服どころか、下着までが洗面所に干してあるのが見える。
身体が冷えてるだろうから、とベッドに入る事を勧めながら、
孝史も寄り添うように隣に横になる。
特に嫌がるそぶりもないし、孝史は「これならいける」そう思った。
暖める事を口実にするように抱きしめ、バスタオル越しに感触を味わった。
ここで抵抗されないと、もう歯止めがきくはずもなく
バスタオルをはぎ取った後は、予想通りの展開になっていた。
積極的では無いものの、ほどよく火照った体と、我慢するような吐息、
孝史は自分の欲望を思い切りぶつけた。
そのまま朝を迎え、孝史は美奈を最初のバス停まで送る事になった。
お互いに連絡先を交換した訳でもなく、孝史にとって一夜限りの幸運。のはずだった

二度目
その翌週の金曜日。またもや帰宅が遅くなった孝史は、先週の事を思い出しながら
車を走らせていた。あぁ、この先のバス停で… と、思ったとき
あの時の女の子がバス停に座っている。
間違いなくあの子だ。孝史は迷う事なく車を停めて声をかけた。
孝史を待っていたらしい。少しドライブに行く事にして、お互いの事を少し話した。
美奈は実家に住んでいて、妹が一人。家は自営業らしい。おばあちゃんも一緒に住んでいる。
彼氏のような人はいたが、曖昧なまま捨てられてしまった事。(前回、雨の中待っていたのはその男だったらしい)
そして、当たり前のようにラブホに入った。
美奈の身体を堪能し、また元のバス停に送る。

三度目
また次の週の金曜日。孝史は一度帰宅していたが、美奈の事が気になって夜遅くなって例のバス停に向かった。
当たり前のように美奈が座っている。また声をかけ、人気のない所にドライブする事になった。
そして、車の中でのSEX。そして、また例のバス停へ。

こんな事が二ヶ月ほど続いた。

本来ならここまで続けば付き合う話になりそうな物なのだが、孝史はいまいち踏み込めない部分があった。
美奈の陰の部分、どこか深入りするのが怖いような…。
具体的には、会うたびに何か孝史の持ち物を欲しがる。使っている100円ライターだったり、有料道路の通行券だったり、もう使っていないインクの切れたボールペンだったり…。
価値があるとか無いとかではなく、孝史の物ってだけで満足そうなのだ。
それに、孝史は今まで一度も避妊していない。美奈はおとなしく従順なのだが、避妊だけはかたくなに拒む。
孝史は何か裏があるのでは、と恐ろしくさえ思うようになっていた。
そんな事情もあって、孝史はまだフルネームも住所も連絡先も教えていなかった。車のナンバーから調べれば、分かると言えば分かるがそればかりはどうしようもない。

そう思ってる矢先、長期出張の話があがり三ヶ月ほど県外に出る事になった。出発は次の木曜日。美奈に伝える方法も無いし、この際縁を切ろうと思っていた。
ばたばたと出張の準備をする中、携帯が鳴った。一つ上の会社の男の先輩からだ。
「なぁ、誰か女紹介してくれよ」単刀直入に言うとそんな内容だ。強引でわがままな先輩の頼みに困っている時、美奈の事を思い出した。
自分が出張中に車を貸すから、この時間帯にここを通るといいですよ、と。

そして、孝史は木曜日に予定通り出張に出かけた。

続く