[幽霊はどうして鉄塔に登るのか]
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周囲に明かりがなく、目を凝らしてみても鉄塔にはなにも見
えない。
オカルトは根気だ。
簡単には諦めない俺は、夜中3時まで座り込んで粘った。
出る、という噂も逸話もない場所で、そもそも幽霊なんか見
られるんだろうかという疑念もあった。
骨組みに影が座っているようなイメージを投影し続けたが、
なにか見えた気がして目を擦るとやっぱりそこにはなにもな
いのだった。
結局、見えないものを見ようとした緊張感から来る疲れで、
夜明けも待たずに退散した。
翌日、さっそく報告すると師匠は妙に嬉しそうな顔をする。
「え? あそこの鉄塔に行った?」
なぜか自分も行くと言いだした。
「だから、何も出ませんでしたよ」
と言うと、だからじゃないかと変なことを呟いた。
よくわからないまま、昼ひなかに二人してあの鉄塔に行った。
昼間に見ると、あの夜の不気味さは薄れてただの錆付いた老
兵という風体だった。
すると師匠が顎をさすりながら、ここは有名な心霊スポット
だったんだ、と言った。
頭からガソリンをかぶって焼身自殺をした人がいたらしい。
夜中この鉄塔の前を通ると、熱い熱いとすすり泣く声が聞こ
えるという噂があったそうだ。