[肉般若]
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目の前に彼女が立ってるのが信じられなくて、私は硬直しました。頭なんか真っ白です。迂闊に開けた私が悪いんですが・・・。
「あら、顔色いいわねえ」
「ど、どうして知ってるの・・・合図のノック・・・」
震えながら言った私に、彼女は笑って答えました。
「帰りがけ会ったのよ。彼女、携帯のナンバー教えてくれたから。それで聞いたの。私がそばに行くって言ったら、あなた怖がりだからってすぐに教えてくれたわよ」
中に入ってドアを閉める彼女に、私は思わず後ずさりました。すると彼女も一歩踏み込んで、
手に持っていたまた沢山ものが入った袋を床に下ろしてからぐっと私の肩を掴んで言ったんです。
「心配しないで・・・。今晩、私がいてあげるわ。あの子たちのことも、心当たり探しましょうね。
チャットで会ったんでしょう?すぐ分かるわよ。・・・それより、」
言った瞬間、ぐっと間近に彼女の顔が寄って、肩に爪が食い込みました。
「あなた・・・あの子に余計なこと、言わなかったわよねえ・・・?」
肩が痛い!でも、何より誰かこの人どうにかして!!
思い出しても、まだ全身に鳥肌が立ちます。美人だけに怖いんですよ。あの時の肩の痛みも、忘れられません。
私は必死に首を振って「言ってない」と繰り返しました。なんて言うのか・・・殺人鬼に目の前に立ってほほえまれたら、
あの時の彼女の笑顔になるんじゃないかとさえ思って・・・(泣)。
私の主観だし、実際彼女を悪者に奉ってるような気がしてきたんですが・・・。
でも、私にだって言い分はあるってことでご容赦下さい。
半泣きで部屋の中で立つ私には構わず、彼女は後ろ手にドアを閉めて鍵を掛け、入って来ました。
それから台所のところで思い出したように靴を脱いで並べて置いて、また私に近づいてずいっと袋を差し出すんです。
「ご飯、一緒に食べましょうか」
は、入っているのはまたしても肉、肉、肉・・・!!!
なんかね、この時はもう自分の妄想だと分かってはいるのですが、この時はその中の真っ赤な骨付き肉が
人間の肉に思えてなりませんでした。
続く