[駐在所]

この駐在所に来る前は、派出所に勤務しておりました。
 田舎に住む事になりましたが、私は「不運だった」と思っていません。
 「職住接近だし、3直交代の不規則な生活をしなくて済む」と、考えたからです。
 しかし、この駐在所には問題がありました。
 首が無い警官の幽霊が出るのです。
 私も最初は驚きました。
 でもその幽霊は、それほど危険な存在に思えません。
 私には無関心のようですし・・・。
 だから私は、段々と幽霊が現れる生活に、慣れていったのです。
 しかし、私は幽霊の正体が気になっていました。
 それで私は寄り合いの度に、それとなく駐在所の幽霊について聞き出そうとしたのです。
 ところが住民達は、いつも「気にしない方がいいよ」と話をはぐらかし、私に何も教えてくれません。
 その度に私は、「よほど言いたくない事なのかも・・・」と思い、何も聞けませんでした。
 住民との関係を、悪くしたくありませんでしたから・・・。
 そんなある日、私はその幽霊に、ついつい話しかけてしまったのです。
 「あんた、いい男だね」と。
 別に、この言葉に深い意味はありません。
 ただ、いつも現れる幽霊とコミュニケーションを取ろうとし、ちょっとおだてただけです。
 しかし私の言葉を聞き、彼は恐ろしい見幕でにじり寄ってきました。
 「俺の顔が見えるのか」と・・・。
 あんなに恐ろしい威圧感を受けたのは、初めてです。
 私は恐ろしさのあまり、すぐにその場から逃げ出しました。
 そして村長の家へ行き、その出来事を話したのです。
 その時の村長は、険しい表情を浮かべ、頑なに口をつぐんでいました。
 それでも私は、駐在所の幽霊について、強い口調で尋ねたのです。
 すると村長は、古ぼけた封筒を私に手渡しながら、こう言いました。
 「この封筒の中を見たら、あんたは間違いなく死ぬ」

続く