[駐在所]
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「その覚悟があるんなら、見てみなさい」
 私が封筒を手に取り、中を確認しようとしたその時です。
 突然に玄関のドアを、誰かが叩く音がしました。
 私と村長が玄関まで行くと、ドア開かれておりましたが誰も居ません。
 「もしかしたら、あの幽霊なのか?」
 「あの幽霊が居る気配がするし・・・」
 「でも、どこにも姿が見えないな」
 私がそう思いながら、恐る恐る辺りを見回していた時です。
 突如、私の背中に悪寒が走ったかと思うと、そのまま私は気を失ってしまいました。
 それからどの位の時間が経ったのでしょうか。
 意識が戻った時は、何と私の体が金縛り状態になっていたのです。
 そして「見たな、見たな・・・」と、あの幽霊が私に呟き続けていました。
 それで、驚いた私は思わず心の中で叫んだのです。
 「一体お前は、何をしたいんだ!」
 「俺をどうする気だ!」
 その時、幽霊はこう答えました。
 「一人になりたい」
 「幸せに辿り着くまで、考え続けたいんだ」
 彼はそう言い残し、自分の家へ帰ったようでした。
 あの駐在所に・・・。
 その後、私は別の建物を駐在所代わりにし出したのです。
 そんな私に、村長は駐在所の幽霊について、こう教えてくれました。
 「あのお巡りさんは、駐在所で火の不始末から、火事を起こしたんじゃ」
 「火はすぐに消えたが、お巡りさんは大火傷をした」
 「それ以来あのお巡りさんは、人を避けるようになってな」
 「火傷のせいで、えらく人相が悪くなったから、しょうがないじゃろう」
 「だが島のみんなは、そんな駐在さんはいらんと怒ってな」
 「駐在さんは、みんなの冷たい仕打ちのせいか、自殺したんじゃ」
 「駐在さんの奥さんも、その後、ここを去っていった」
 「あの封筒にはな」
 「駐在さんの、顔写真が入っているんじゃよ」
 「もうこれ以上は、何も知らん方がいい」
 私は今でも、「彼が早く幸せに辿り着くよう」祈っています。

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