[釣り]
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するとその時、海水が突然、私に降りかかってきました。
それと同時に、足首を何者かが掴んでいる事に、私は気付いたのです。
私は驚き、その手を振り払って、道路まで走り続けました。
しかし得体の知れない何かが、私を追いかけくる気配がします。
しかも、どんどんと私に近付いてくるようでした。
私が必死に走り続け、道路まで辿り着いた時です。
すぐ近くに、自分の車がありました。
私は後ろを振り向きましたが誰も居ませんし、自分を追いかけてくる気配も感じません。
「もしかして、女房とすれ違ったのか?」
「でも、ここに来るまで女房を見かけなかったし・・・」
その時、私は自分のポケットに、車のキーが入っている事に気付いたのです。
「車のキーを、女房が借りに来るはずなのに・・・」。
私は妻が心配になり、妻を捜す事にしました。
そして釣場に向かって、私が歩き出した時です。
私は車の中で、誰かの気配を感じました。
奇妙に思い、私は車の中を覗き込みましたが、誰も居ません。
「気のせいか」
私はそう思い、車から立ち去ろうとしました。
すると車から「置いて行かないで」と、妻の声が聞こえたのです。
慌てて振り返って見ると、突然に車の窓ガラスをすり抜け、白い手が私の腕を掴みました。
私は恐ろしくなり、必死に逃げようとしましたが、物凄い力で腕を掴まれているため、いくらもがいても逃げられません。
そうしているうちに、再び妻の声が聞こえてきました。
「一緒に、帰りましょう」
私は思わず「嫌だぁー」と大声で叫びましたが、その後の事は覚えていません。
どうやら私は、そのまま気を失ってしまったようなのです。
次の日、妻は海で発見されました。
妻は足を滑らせて、海に転落したと見られています
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