[錆びたかんざし]

まだ学生の頃、いつもバイトのあと彼氏とイチャイチャしながら駅まで帰るっていうパターンだったんだけど、
ある時彼が「どうしてもやりたい。今すぐ」とか言い出して、バイト先は神田だったんですけど、
土日の神田ってほんと人気がなくて、けっこう路地裏とか駐車場とか、平気でやれるかんじだったんで、
時々その辺で青姦しちゃってたんです。もちろん立ちでです。で、古いかんじの工務店みたいなのと、トタン屋根の車の修理屋みたいな看板の店との間に細い路地があるのを見つけて、両方廃屋っぽかったんで、この奥でやっちゃおうってことになりました。
石畳の薄暗い路地に、まずは彼氏が入っていきました。わたしも少し時間差で人通りが無いのを確認してから続きました。
外から見た以上に通路は真っ暗で、突き当たりは反対の通りのビルかマンションの建設現場で、ブルーシートがかかってました。あ、これは楽勝でけっこう安心して出来るな、なんて思ってたら、奥から戻ってくる彼とぶつかりました。
「余裕じゃん」
て言ったら、「しゃべるな、しゃべるな」って彼が鋭い小声で言って、わたしの手を掴みました。
それでものすごい勢いでわたしを引っ張って戻るんです。??とか思ったけど、
いつも明るい彼のただならない様子に、黙って従いました。

工事現場に人でもいたのかな?って振り返ろうとしたら、「振り向くな」って彼が言いました。
うしろでかすかに、じゃりって土を踏む音が聞こえました。そのとき、ものすごい勢いで全身に鳥肌が立ちました。
なんでかはわかりません。何かを理解して鳥肌がたったとかではないです。
同時に、からん、と何か硬いものが落ちる音が聞こえました。
彼が手を強く引っ張りました。わたしも早足で下を向いて歩き、そしてついに路地から通りに出たところで彼が走りだしました。
わたしも全力で走り、神田駅の見える大通りまで来て、やっと彼が止まりました。二人とも息がすごく上がってたけど、必死さと緊張でそこまでくるまで気づきませんでした。
「なに?なにがあったの?」と聞くと、彼がちらっと後ろや横を振り返って、「いや、やばい。とりあえず電車に乗ろう。人が一杯居るところにいきたい」と言うので、二人でJRに乗りました。

切符を買う彼の顔は真っ青でした。わたしも同じだったと思います。
ちょっと前まで発情しまくりで、お互い股間を熱くしてたのが嘘のような冷えっぷりです。改札を通ると、彼も少し落ち着いたようでした。
いつもはわたしの駅まで送ってくれるのに、「今日はお前、お母さんに迎えに来てもらえ。俺もそうするから」と彼が言って、(二人もと実家だったので)、結局そのまま話は無く、それぞれ親に迎えに来てもらって(笑)帰りました。
で、家についてしばらくしてから彼から電話がかかってきて、何があったのかをやっと話してくれました。
あの細い路地を入っていったとき、両脇は廃屋で裏は工事現場で、これは余裕、今後の青姦スポットとしてキープだ、とか思ったらしいんです。(私も同じことを思っていたので)
路地は突き当たりで曲がるようになっていて、そうすると少しばかりのスペース(工務店のほうの裏庭だったっぽいと彼は言ってました)があり、そうしたら、その土の上に裸の人がこっちに背を向けて体育座りをしていたって言うんです。

続く