[長年の怪異]

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それから1年ぐらいして、実家の祖父が死んだのをきっかけに広島に
引っ越すことを決めた。祖父は地元でも親切で人望が熱かったので、大勢の人が
葬式に来てくれた上に、お坊さんが3人も出動するという豪華な葬式だった。

それから一週間経ったある日、葬式のとき撮った写真が現像されて送られてきた。
俺はアフォだったので、「さ〜て心霊写真でも探そうかなぁ」とか不謹慎なこと言いながら
写真を見ていたから母と父に物凄く怒られた。
後からあらためて見てみると、3枚くらい変なものが映ってる写真があった。
一枚目は皆で集合して縁側を後ろに撮った写真なんだが、縁側のガラス戸についてるカーテン
に、何か黒い髪のようなものが絡みついている写真だった。
2枚目は俺がふざけて、兄と廊下を後ろにを撮影した物なんだが、廊下が不自然に
暗く、顔のようなものが半分だけ壁から除いてる。心なしか白目をむいているように見える。
3枚目はガラス戸を挟んで外を撮影した写真なんだけど、ガラス戸に手の跡がハッキリ映ってる。
指紋とかじゃなく、ちょっと透明な手がベッタリと張り付いてる。
当時俺は9歳になるかならないかくらいのガキだったんで、あんま写真の意味が分からなかった。
とりあえず親に教えてみたけど、気のせいとか言って写真を寺に持って行ってしまった。

5年経った。

実家を改装して二階が広くなり、部屋が5つできた。
兄の部屋は西日しか当たらない位置にあるので、日中は結構暗い部屋だった。

ある日、俺が二階に上がろうとしたとき、誰もいないハズの兄の部屋からギシギシ
と軋む音がする上に壁を蹴ってる?ような乱暴な音がするのでちょっと怖い気分もあったが
除いてみた。

カーテンレールの上に女の頭が乗っかっていた。
不自然なほど顔が暗くて、半開きしている口元しか見えない。
電気をつけるヒモに首が無い体がぶら下がっていて壁を蹴っ飛ばしている。

俺は「ヒェェェッ!」とか漫画みたいなセリフ叫びながら階段を転げ落ちて、
一階のリビングでなんでも鑑定団を見てた父に今見たものを話した。
父は「ハァ?」を連発しながら俺の話を聞いたが、すぐに2階に走って行った。
俺は恐ろしくてその場に凍りつき、とりあえずなんでも鑑定団を鑑賞していたが、
父が10秒くらいで降りてきた。なにもいなかったらしい。

その晩外出から帰ってきた兄に話すと、真っ青になって「マジ?」とか「コエー」とか言いながら、
1階の縁側の小部屋に布団を準備し始めた。
俺は祖母に、このあたりで昔事故とか起こらなかったかどうか聞いてみると、
昔、実家の裏にある道路でタクシー運転手の死亡事故があったらしい。
道路のすぐ脇に川があり、その川に突っ込んで死んでしまったらしい。
ブレーキ跡がなかったので、警察は自殺だろうと言い、運転手を運んだ。
祖母はその騒ぎに近所の友達と一緒に行ったらしいが、担架にで運ばれている運転手の顔が妙に
強張っていたそうな。昔からこの辺りは見通しが良い割には妙に事故が多い。
俺も2,3回事故を見た。(見たというより音を聞いた。車が引っくり返ってホイールが空回りする音とか)

続く