[白蛇の招魂]

いつぞやの6月
その日は相方と、ロードワークで ○鎚山のふもとの
ある集落にやって来ていた。
何でも彼女曰く『歴史的に有名な史跡がある』と云うから付いて行ったんですが
現地に着いて『史跡』とやらに行くと、 まぁ辺鄙な所だった。
木、山、家、木、田、畑、家、川、家、山。
「また騙された」と気付くまでに大して時間は掛からなかった。

私の課題は地元の風土、郷土史に関するモノで、四国中いろんな所へ行く。
ただし、いつもオカルトチックな場所ばかり、
先日も、古代人の霊が出る鍾乳洞とやらに行ってきた
元来ビビり性な私が好き好んでそんな所に行ったりはしないのですが
研究室の相方や助教授が画策して心霊スポットばかり行き先に選ぶ。
そんな話。

長文4個分。スレ借ります。

棚田の坂を登りながら 相方は史跡にまつわる話とやらをしてくれた。
『――かつてこの地で大暴れした白蛇の精がいた。
 普通、白蛇といえば神の使いだとか守り神だとか相場が決まってるが
 相当の荒神だったらしく 村々にい多くの災いを振り撒いた。
 その時、集まった石鎚山の山伏達が死闘の末、これを封印したのだという。

  大正10年9月12日の出来事だった――』

「えらく最近だな、日付もハッキリしてんのかよ」
『ソレを封印した塚の跡が此処なんよ』
指差す先には
盛った土の上に鏡餅状に石が3つ置いてあるだけのしょぼくれたモノだった。
とても何かを封印しているとは思えない。
「何もないんだけど」

『塚の跡って言うたやん。
 先の戦中のうやむやで
 よく分かってないんちて、誰かが塚を壊して
 封印を解いちゃったんだとかで、コレはその塚の名残だけ。
 今では白蛇の精は自由に動き回ってるんだってサ。』

「それはヤバいんじゃないのか?」
『まぁ、一度封印したときに前牙を抜いちゅうとかで力はかなり弱くなってるんだけど
 ただ、今でもこの塚周辺の家では白蛇の瘴気に当てられた子が生まれて来るんだちて
 犬神憑きならぬ蛇神憑きの子が。
 発症すると舌が異常に長かったり、ウロコが出来たり、
 階段を這いつくばって昇り降りするようになるっちゅう』
「それは..一生そのままなん?」
『ん― 簡単に治せるらしい ...いや治すのとは違うか』
「治すのと違うとは?」

『伝染(うつす)んだよ 他人に。』

続く