[ありがとう]

あるところに普通の女の子がいた。
その女の子は勉強をさせても成績は中間。
運動をさせても、凄くもないし、駄目でもない。
顔も可愛くないし、ブスでもない。
太ってもいないし、痩せてもいない。
そんな女の子だった。

ある日、その女の子と同じ学年の女子がこう言った。

「最近、私変な夢みるの。」

その女子はすぐ嘘をつく子で、ほとんどの人が嫌っていた。
だが、先生はその女子を贔屓してたようで
その女子が先生にチクると、関係のない子でも犯人と決め付けて激怒した。
これからはその女子を「M」とする。

普通の女の子は
「どういう夢?」
普通の子もMがきらいだった。正直どうでも良いと思いながら軽く尋ねた。
するとMは1回咳払いをし、いつもより声を低くし、ゆっくりと夢の内容を語り始めた。

「なんか、知らない暗い道を歩いてるの。あ、私と貴方がね?」
女の子は(どうしてそう人を巻き込むのか…。)とあきれ果てた。
けれど自分から聞いておいて聞かないのはきっと怒られると思い、
適当に「うんうん」「へぇ〜」「それでそれで」と相槌をうっていた。
勿論何も聞かずに。聞いていても仕方がないと思ったからだ。

「ちょっと!聞いてるの!?」
突然Mが怒鳴りだした。女の子は「聞いてるよ」と嘘をついた。
「今から面白くなるの!何で聞いてないの!?」
(またでた、これだからヤなんだよ。)
女の子は仕方なく謝り、しっかり聞く事にした。

「男の人に追いかけられたの。私は大丈夫だったんだけど。
貴方は足が遅くてね、刺されちゃったのよ!」

何が言いたかったのだろう。私への嫌がらせか?
と女の子は暫く黙っていた。
Mは、「それじゃあ気をつけてね、あははっ!」
と可愛らしく言った。…可愛くはなかったそうだが。
次の日、Mは女の子と一緒に帰る約束をした。
Mとは反対方向だったが、無理に一緒に帰ることになった。
(嫌だな、なんでこんな事しなくちゃいけないんだろう。)
女の子は思ったが言えなかった。

Mの家までいくと、男の人がやってきた。
ゆっくり歩いてMと女の子の近くまでやってきたのだ。
Mは「何々?私達に何か用?」といわんばかりの満面の笑みを浮かべた。
そうだ、そういえば男好きだったな。と女の子は思った。

するとMはいきなり倒れた。
背中を斬り付けられた様だ。
痛さでうずくまっている。
女の子は目の前にいる男を見た。
男の手には刃物が握られていた。

あの男が?いや、だけど男は目の前にいる。
じゃあ誰が?
男はニヤリと笑った。
「よくやったね、これでいいかな?」
女の子は「有り難う、お兄ちゃん。」
と答えた。

女の子の手にはカッターが握られていた。


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