[指輪の行方]

大学時代にサークルの先輩から聞いた、当時高校生だった先輩の友達が体験した話です。
その先輩は高校時代は部活には入っておらず同好会として
放課後十数人でサークルのような活動をしていました。
同好会の名の通り部活ではないので部費というものが我当てられるはずも無く
部長もしくはそれに近い立場の人間一人もしくは二人が毎年夏休みに、
形だけのいわば顧問の先生の知り合いがやっているペンションで住み込みで
2週間程バイトをして同好会の部費に当たるお金を稼ぐのが
代々受け継がれている言わばしきたりのようなものでした。
先輩(仮にA先輩とします)が3年になったときにその友達が部長になり
部長の彼(Bさん)が夏休みにペンションにバイトに行く事になったそうです。

ペンションに着いたBさんは早速顧問の先生の知り合いのペンションオーナーと面通しすると
施設の部屋数や施設、仕事の内容などの説明を受けました。
長期休暇という言わばペンションにとって稼ぎ時なだけに
仕事量の多さに絶句しながらもふとペンションの見取り図を片手にペンションの中を案内してもらうと
ふと疑問に思う出来事にあいました。かきいれどきで満室が続いているにもかかわらず、2階の2−2号室の
扉に使用厳禁と書かれた張り紙がされてその部屋だけ使われていないのでした。
その件に関してオーナーに尋ねると、「あぁ、ここはエアコンが故障しててね、去年から使って無いんだよ」
と一言、‥去年までは?とさらに疑問に感じ詳しく聞き返すと、「‥‥いや、ちょっとな‥‥。」
と怪訝な表情でオーナーは言いました。

ちょうど休憩時間になりBさんは他の従業員の人たちにこの事に関して問いただして見ることにしました。
「ココってもしかして幽霊がでる開かずの間ですか?(笑)」とBさんが尋ねるとと
それまで談笑していた従業員達の顔が一気にくもりその場はシーンとなってしまいました。
Bさんが「もしかしてやばい事聞いちゃいました‥か?」と言うとBさんの隣に座っていた男の従業員が
おもむろに口を開きました。「‥‥実は、そうなんだよね‥‥‥‥」
その従業員の話によると、ちょうど去年の今頃まではその部屋は普通に使われていたそうです。
このペンションは予約制なんですがちょうど去年の今頃、旅行系の雑誌のフリーライターをやっている女性が
アポ無しでペンションにやってきたそうです、本来なら予約していない客は泊めない事にしていたオーナーでしたが、
このお客に関しては旅行系雑誌のフリーライターという事でもしかしたら宣伝になると思い、
ちょうど空いていた2階の2-2号室に止まってもらう事にしたのでした。
料理にもいつも以上に手をかけいざ食事の時間になり2-2号室の女性客を呼びに行ったオーナーの奥さんは
とんでもない物を見てしました。浴室のドアノブに紐をくくりつけて首を吊っている女性の死体でした。
部屋の中には遺書があり、プロポーズしてもらった男性に裏切られた事を悩んでの自殺という事でした。
それ以降この部屋に泊まった客からは、エアコンやテレビがいきなり止まったり勝手に付いたり
夜中に風呂場から女性の泣くような声が聞こえたり風呂場のドアが勝手に開いたりというふうに
怪奇現象のようなものが起こるとのクレームがあり、事件後まもなく封鎖して去年から開かずの間として
封印していたという事です。

続く