[まとわりつく腕]
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2人は東京から湘南に遊びにきて、夜の砂浜を散歩していました。
砂浜に小さなボートがひっくり返しになっていて、そこに座って話をしていたら
2人とも腰の辺りがムズムズしてきたそうです。
男性は彼女が自分の腰をスリスリと触っていると思い、
女性は彼が自分のことを触っていると思っていたそうです。
なのでムズムズを気にすることなくとめどない話をしていました。
男性がふと、彼女の方を見ると
自分の腰を触っているであろう彼女の手は、彼女の膝の上に両方ともありました。
しかし自分の腰はムズムズと誰かが触っています。

(えっ・・・・・・)と思い、後ろを振り向いてみましたが何もいません。
がしかし、視線を少し下に移した時
そこには無数の白い腕が砂浜からでていて
そしてあり得ないくらい長ーくのびていて自分たちの腰を触っていたのです。
彼女も異変に気づき、辺りを見回すと
辺り一面に白い腕が出てきて彼らのことを掴まえようとしたそうです。
腰が抜けそうなくらいビックリして、ガクガクしながら砂浜に足を取られつつも
なんとか駐車場まで走ってきたそうです。

JR横須賀駅で2人は車を降りました。
車を降りた時2人は少し落ち着きを取り戻していて、私たちに丁寧にお礼を言い、改札口へと向かっていきました。

家へ帰る途中、彼氏が「夏でもないのにお化けって出るんだなぁ。だけどあの2人助かって良かったよな。気がつかなかったら砂の中に引きづり込まれたかもしれないしな」と言いました。
私も「そうだね。よかったね」言いました。

でも私は見てしまったのです。
彼氏が駅で車をUターンさせてた時、改札口に向かう2人の足首ををしっかりと握りしめていた4本の白い手を。


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