[裏クレヨン]
私の妻は、二週間前に病死しました。
妻の死は、私の一人息子にとって、あまりにも悲しい出来事だったのでしょう。
いつも素直で、明るく元気だった息子は、妻が死んだ時、泣きながら妻の亡骸から離れようとしませんでした。
それ以来、私の息子は口数が少なくなり、いつも一人でブロック遊びばかりをするようになったのです。
また、妻が死んでからの息子は、毎日おねしょをするようにもなりました。
それでも私は、「時間が経てば、息子も心の傷が癒え、昔の元気を取り戻すだろう」と、楽観的に考えるよう努めていたのです。
そして、私は毎日、息子に明るく接するようにしていました。
でも、私には仕事もあり、息子と一緒にいられる時間が限られていたのです。
私はそれが歯がゆくて、会社でも息子を心配するあまり、仕事で致命的な失敗をすることもありました。
そんなある日、私が会社から帰宅すると、何と息子が、灯油を手ですくい舐めていたのです。
私は慌てて、息子を叱り付けてしまいました。
でも、それからも息子の奇行は、修まらなかったのです。
修まるどころか、息子の奇行は、どんどんとエスカレートしていきました。
砂や粘土を食べたり、クレヨンを食べたりと、とにかく息子は、何を食べるか分からない状態だったのです。
私はやむを得ず、息子が変な物を口に入れないよう部屋に閉じこめ、会社に行きました。
「仕事が終わったら、すぐに病院へ連れて行こう」
私は、そう考えていたのです。
でも、それが間違いでした。
続く