[沈没船の死体]

うーむ、さっき吉村昭の「海の柩」を読んだのだが怖かった・・・。
後書きから考えて、実際にあった話だと思う。

太平洋戦争末期、北海道の漁村に、ある日たくさんの日本兵の水死体が流れ着いた。
数は500体近く。どうやら兵士を満載した輸送船がアメリカの潜水艦に攻撃され、沖合い
で沈没したらしい。死体の中に将校のものは無かった。将校たちは救命艇で脱出できたらしい。

死体を収容していた漁師たちは、奇妙なことに気づいた。腕のない死体がかなり混じって
いるのだ。手首の欠けているものもあれば、上膊部から失われているものもある。海水に
洗われて血はにじみ出ていなかったが、鋭利なもので断ち切られたように断面は平らだった。
中には片腕がない上に、顔面に深々と裂傷の刻まれているものもある。船から海中に飛びこんだ
折に出来た傷かとも思えたが、死体の半ば以上が腕を切り落とされていることは異様だった。

・・・・・さてクイズです。なぜ死体には腕が無かったのでしょう?

兵士たちは、将校の乗る救命艇にしがみついたが、沈没をおそれた将校たちに
軍刀で手を切り払われた。ってのはありきたりか?


854 名前:847
>849
あら、いきなり答えが出てしまった。この話知ってましたかね?ちょっとヒント
を出しすぎたかなあ。
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(筆者が生き残りのKから話を聞くシーン)

「切りましたか?」
 私はたずねた。
「なにをですか?」
 かれは、いぶかしそうに私を見つめた。
「兵士の腕です」
 男は、一瞬放心したような眼をした。徐ろに視線を落としたが、あげた顔には
妙な笑いが薄くただよっていた。
「私は、切りませんよ。暗号書を抱いて舟艇の真中に座っていたのですから・・・。
 かれの微笑は深まった。
「切った将校もいたのですね」
 と、私。
「いました」
 と、彼。
「船につかまってくるからですか」
 と、私。
 
続く