[中の人]

このビデオデッキ。概ね満足なのだが不安な点がひとつある。
それはキュルキュルとビデオが絡まったような音を立てることだ。
ビデオを入れっ放しにしていると、絡まらないように中でガチャガチャ動作するのものなのだが、
このときもキュルキュルいうのでちと困る。
最初からテープが詰まっていたこともあり、レンタルビデオが中で絡まったらシャレにならん。
ということで3日間耐久試合のように見続けていたビデオ鑑賞をを一旦ストップした。
丁度借りてきた映画もあらかた消化していたし、しばらくは家庭用に録画した物で様子を見ることにするか。
その日の夜はすることもなく、早めに就寝した。

・・ル ・キ・・ ・・・ギ

何か変な音を聞いた気がして目が覚めた。
全身に汗をかいている。心臓の鼓動が早い。
喉も渇いているようだ。なぜか涙も出ていた。
怖い夢を見た後のような、そんな後味の悪い気分がする。
しかし、とくに夢を見たような気がしない。
何だが良く分からなかったが、冷蔵庫から冷えたお茶を飲んだら落ち着いたのでまた寝ることにした。
次の日、午前は学校で講義を受け、午後はバイトへ向かう。
バイトが終わり、帰ってきたのは深夜0時を少しまわったあたりだった。
流石に何もする気が起きないので、風呂に入ってすぐ床に就いた
「キュ・・ ・キ・ル ・・・ギィ」
目が覚める。
昨日と同じように、体が熱く、気分が悪い。
なんなんだろうか。なにか病気にでもなっているのかもしれない。
冷蔵庫に向かい、お茶を飲む。
動悸も治まり、落ち着いたのでまた布団に入って寝ようとした。
「キュル・・・ キュルル・・・」
ビデオデッキからテープが絡まったような音がした。

首を横に向けてビデオデッキを見る。電源ランプはついていない。
「キュルル・・・ ・・ル・ ギッ」
立ち上がり電気をつけてビデオデッキを見る。
電源はスタンバイ状態。つまり入っていない。
テープも、絡まると嫌だからから抜いてある。
ということは、絡まり防止の為にガチャガチャ動作することもないはずだった。
そもそも、その場合はキュルキュル言う前にガチャガチャ音がするはずだ。
「キュルルル・・・ ギィ・・・ ギィィ・・・」
微妙に音も変だ。やっぱりどっか故障してんのかな?
デッキの前に屈みこみ、投入口に指をかけて開き中を覗き込む。

良く見えないが、奥のほうで何か白っぽいものが動いているように見える。
んー・・・?
なんともなしに顔を近づけて見る。
この白っぽいのはなんだろうと思ったら突然

目 が 合 っ た 。

中に人がいた。性別は分からなかったが、青白くこけた顔をした奴が投入口の奥からこっちを見ている。

「キュル キュルル ギュる ぎぃぁぁああ」そいつが鳴いた。

「う お あ ぁ ぁ ぁ !?」悲鳴を上げて飛び下がった。

その勢いで壁にぶつかり、引いてあった布団の上で中腰の姿勢のまま固まる。
冷や汗が止まらない。心臓の鼓動も早く、涙が出てきた。この感覚には覚えがあった。
昨日の夜と同じだ。
いや、それよりずっと前から幽霊にに関わると起こる感覚だった。

続く