[拷問部屋]
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少年達はいつの間にか僕の目の前で歌っていた。
しかし、彼等は、下半身が丸出しだった、いや、目の前にぶら下がっていたんだからね、間違いない。
歌は次第に震え、途切れがちになった。遂には絶叫に変わった。
狂った様に叫ぶ少年達は全然別個に逃げる者もあれば、ぐぅと黙って咽ぶ者もいた。逃げた少年は何かに引き倒された様に転び、白い尻に赤い線が浮かんだ。何条も浮かんだ。鞭の跡らしかった。
それで、わかったんだ。これは、記憶だ。
この部屋が記憶している、過去の記録の再現だ。
使われない物置き小屋、何の事はない、懲罰部屋さ。
三十を越す少年達の阿鼻叫喚の地獄絵図。全員、尻にぶち込まれて哭いてたよ。どうやら複数人にやられた者もいたらしかった。
ただ、全員、泣きながら聖書の文句を諳んじさせられていた。それが名目だったのだろう。
後で知った事だが、女性に対して接触する事が出来ない修道士同士の同性愛や結婚やセックスを禁じられた神父が修道士と鶏姦することはままある事だったらしい。
勿論、公になっては不味い事だがね。
……それで、さ。部屋いっぱいに少年達の歪んだ姿体が蠢いているんだが、一人、壁際にいた少年が何かを構えた様な格好をした。
ナイフか何かか、と思ったが、次の瞬間、彼の身体にゆらゆらと炎が浮かんだ。
そして、あっという間に、少年は燃え上がって黒い燃料の様になって倒れ伏す。とそれを合図に、少年達が一斉に口を塞がれ、組み伏せられた様な動きをする。
何か口に詰め込まれたのか、ぐぅぐぅと唸る。それから、ギュ、ギュ、ギュと音がなる。
舌が切り離されていた。
舌は壁に打ち付けられ、少年達は消えていた。そして舌はするすると萎んで枯れて、朽ちてしまった。

懲罰部屋じゃなかったんだ。拷問部屋だったんだ。
これもつい最近知ったことなのだが、教会と言うのは処罰を実施する場合、破門が最高で人の命を奪う事までは出来ないのだそうだ。
かの悪名高き異端審問、魔女狩りも教会による裁判ではなく市井の裁判に“払い下げる”のだそうだ。
あの僧院の拷問部屋……いや、処刑部屋と言ったが良いか。
あれは、そもそも懲罰の為や処刑の為にある部屋じゃあないと言う事だよ。
では、何かって?
あくまで推論だが、神職者が子供を攫って来てレイプする為の部屋だったんじゃないかと思うんだ。
僕は、結局、朝まで表をぷらぷらと歩きながら過ごしたよ。……」


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