[乱暴なバス運転手]

あたしの友達が体験した話です。新年も明けて間もない去年の一月半ば頃だったと思います。
友人のS子は大学受験のために毎日遅くまで塾通いをしていました。地方在住のため、
塾といってもバスで30分程も掛かる街中にある某有名塾にS子は通っていました。
夜の8時に塾が始まり10時で終わり、10時30分発のバスに乗って帰る毎日でした。
あくる金曜日、塾にて中学時代の旧友とばったり再会したS子は
塾の時間が終わると懐かしさのあまり話し込んでしまいいつもの時間のバスで
帰ることができず一便おくらせて11時発のバスで帰ることになりました。
さすがに夜11時ともなると街中の人数もまばらでバス停でバスを待つのも
S子の他に、自分の後ろに並ぶ学生風の男性一人だけでした。
きらりと遠方が光ったかと思うと最終便がやってきました。
しかしバスの動きがあきらかにおかしいのにS子はきづきました。

パーアアアアアアアアパパと耳障りな警報を鳴らすとともに急ブレーキでバス停に泊まったバスの中には
乗客は一人もいませんでした。中には鬼のような形相をして目を血走らせた運転手だけです。
「さっさと乗ってくれ、ぐずぐずしてると発車しますよ!!」とまるで客を無視したような、
それどころか乗ってくれるなといわんばかりの異様なテンションの運転手の言動に意表をつかれたS子は
「……なんだこの人……あと1便遅らそうかなぁ……」と迷いつつ時刻表を見ると
この便で最終であることに気づきました。ギロリと目を見開いてs子をにらみつける運転手に
いやいやながらも定期をサッと見せつつs子は、なるべく運転手から遠い席に座りました。
待合所でs子の後ろに並んでいた男性も異様な雰囲気を察したのかS子よりも後ろの席に座り
合計三人の異様なバスは漆黒の闇へと出発しました。
前のドアが閉まるとバスは急発進とともにぐんぐんとスピードを上げていきます。
ふと気がつくと運転手がバックミラーでS子を頻繁に見つめているのに気づいたs子は
気持ち悪い思いを取り払うがごとく参考書を取り出し勉強してるいる振りで時間をつぶそうと思いました。
しかし運転手は以上とも思える頻度でバックミラーでS子を睨んでくるのでs子は怖くなり
今にでも降りたい気分でいっぱいでした。一人とはいえ後ろに乗っている男性は身長が高く体格もしっかりしており
この状況で自分以外に同乗者がいることでs子は非常に心強く思いました。
しかしそう思ったのも束の間、赤信号で止まったのを機に運転手はいきなりs子の方を振り向くと
「ちょっとアンタ、こっちきて定期を見せてくれないか?」と鬼のような形相でs子に問いかけてきました。

続く