[野良犬に襲われる]
前頁

すると驚愕の真事実。

「さ、さ!!!!!」

僕は思わずそう、悲鳴を上げる様な声でそう叫んだ事を覚えています。
追っ手は三匹いました。これはとてもリアルハンティングだと思いました。捕まったら食われると思いました。
だって三匹の、まさに「飢えた獣」と云った感じのワンワンワンとかガフッとかガルッと三重奏が流れてきます。

更にスピードを上げた時気付いた事がありました。僕は長めのコートをはおっていたんです。確かダッフル。
職場用に。それが誤りだったのかも知れません。

スピードを上げれば上げるほど裾が後方になびき、三匹の飢えた狼の親戚の牙にかかりそうなんです。

「うおああああああ!」

と悲鳴を上げながら逃げます、そりゃ逃げます。
絶望を加速させるケルベロスの三重奏、コートの長さと云う誤り、誰も助けてくれない夜闇の孤独。
そして更なる絶望が待っていました。

目の前に右への直角カーブが現れたのです。道幅は車の通れない、車が軽ならばその半分位。

(この最大スピードで曲がれるのか!?転んだりぶつかったら死が待っているぞ…いや!)







(絶対に曲がらなければならない!)



火事場の馬鹿力とでも良いましょうか、人間本当に死の危機が迫った瞬間って覚醒するんですかね。
カーブの瞬間、僕の傾いた角度は多分45度以下。
狭い道、出しうる最高速度、購入時から何のメンテもしていない自転車の擦り減りまくっているであろう二年物タイヤ。
今考えるとよくもまあ悪条件が重なっている上で、もう二度と出来ないであろう
あんな素晴らしいカーブを繰り出す事が出来たなんてほんとミラクル。
そして今度は左直角カーブ。成功。

自転車置き場迄走らせ飛び下り自転車は鍵も掛けず、入り口迄ダッシュ。
いや、ふと気付いたら犬はもう追って来ていなかったんですけれど。何回か遠くから吠える声が聞こえました。


野生の恐怖と人間の底力を知った夜でした。
ちなみに次の日もう怖くてあの辺りに近付きたくなかったので辞めました。


次の話

Part125menu
top