[ください・・]

私が足を悪くして入院している
時に起きた話。

 夜中に寝苦しさを覚えて、ふ
と目が覚めたのです。辺りはま
だ真っ暗で、他の患者さんは皆
寝息をたてて眠っている。私は
寝直そうと思い目を閉じたので
すが、急に足に違和感を感じて
目を開けてしまいました。思え
ば、閉じたまま眠ってしまった
方が良かったのかもしれません

 布団がおかしいのかと思い、
上半身だけ少し起こして足元を
見ると、思わず顔が強張ってし
まいました。


爪先の辺りに見慣れない手が二
本ある…。

正確にはベッドの下から出て
来ている感じでした。最初は
第一関節だけ見えていたのが
次第に第二関節も見え始め、
まるで上に攀じ登って来てい
る様です。その手は何だか青
白く、爪はカナヅチか何かで
叩き潰されたようにグシャっ
と潰れていたのを鮮明に覚え
ています。

私は初めて、血の気が引く様
をリアルに感じました。怖く
て仕方なかったのですが、身
体が動かない訳でもないのに
食い入るように見入っていま
した。

ところが、攀じ登って来よう
とした二本の手は、手の甲ま
で見せた後動きを止め、その
まま微動だにしません。暫く
そのまま放心状態に近い形で
見つめていたのですが、ふと
我に返り異様な気配に気付い
て天井を見上げると、周りを
区切っているカーテンを吊し
てある金具の上に、先程まで
見ていた両手と、目から上だ
けを見せた何者かがコチラを
ジィっと覗いていました。

続く