[仲間]

「狐が探しているもの「サバゲの対戦相手」を書いたものです。
あの様な事を長々と、なぜ書く必要があったのか最後にあかします。

それは先週のこと、私たちのチームはG県とS県の県境にある山奥で昼間の
ゲームを8人で楽しみました。久々のゲームに熱中し山あいはすでに薄暗
くなり始めていました。 身支度と忘れ物の確認を済ませ結構離れた車ま
で皆が歩き始めて数十mも進んだでしょうか・・・彼女はそこで待ってい
ました。 そういつぞやの狐様です。 私を含め皆が息を飲んだのは言う
までもありませんが、不思議と恐怖感は以前ほどではありませんでした。
10mほど向こうで真っ直ぐに私たちを睨み付けた彼女は、こう話しかけま
した。
        
「おもいだせたか」若い女の人の声です。だから彼女と書きました。
もう一度「おもいだせたか」私は・・・いや皆も、あの夜の事かとおもいま
した。そして丁寧に返答しようと思いましたが、声はおろか体が動きません
まるで金縛りです。
・・・そして彼女が「ほら!」と言った瞬間・・・それは古い知り合いに合
ったのに名前が思い出せない・・・そんな名前が不意に浮かんだ様でした。

私たちは小高い丘の上に陣地を構えていました。小銃や騎兵銃に手榴弾、
重機などありません。大きな砲隊鏡がありました、七糎砲隊鏡、日本光学
今のニコン製です・・・現世の記憶(知識)が交錯します。
その七糎砲隊鏡で見る遥かむこうには、もう何日も前から露の戦車があり
ました。そう現世で知った名はT34/85・・・わが軍の戦車では考えられな
いほど砲身が長かった。 そして物凄い砲撃に合わせて動き始めました。
 
すべての記憶がよみがえります。私の小隊・・・といっても、もう十数人
しかいません。 「○○少尉!」私の前世の名です。不思議と違和感はあ
りません。 そう、少々裕福な家に生まれ大学出てから候補生となれたのと
親類の伯父が陸軍の将校だったおかげで、私のような青二才が士官です。
この砲撃とあの大きな戦車に立ち向かうすべも勇気も、もうありません。
恥ずかしいが足が震えます。たたき上げの○○軍曹ですら顔色がありません。
すでに砲撃で左の壕が全滅、私は退却を命じました。
他の小隊とも合流ままならず、結局我が小隊の生き残り8人で南へと脱出、
農家から食料もらったりして5日ほど歩きました。
そして最後の夜がきました。

続く