[食欲]

キャンプブームの頃だった。
私達は友人と2人で割りと空いている所を歩いていると40代位の2人の男性に「火はありませんか?」と声をかけられた。」
煙から変な匂いがしていて気になったが、話みると2人は兄弟で、東京から来たという。
私は理由もなく2人とも好きにはなれなかったが、友人は兄の方と楽しげに話していた。
暫くすると友人が「怖い話をしない?」と言ったが私は「余計寒くなる。」と乗り気ではなかったが流れで話す事になった。
すると兄の方が、こんな話を始めた。

小学4年の時、都心から引越して来た時に体験した話です。
タナカくんという々学年の友達ができました。
毎日一緒にいるうちに気付いたのですが、タナカくんの体にはどこかしらにアザがありました。
「どうしたの?」と聞いても「何でもない」と笑って答えるだけ。
でも毎日のように聞こえるお母さんの「このクソガキ」や「死ね」という怒鳴り声などで薄々は知っていました。
多分、虐待されていたのでしょう。
ある日、救急車の音がして外へ出てみるとタナカくんが担架で運ばれてました。
坊主頭には黒く固まった大量の血がついてました。
お母さんは「弟と喧嘩して壁に頭をぶつけた」と説明していました。タナカくんの弟は無表情で立っていました。
お母さんは魔女みたいなワシ鼻の先が話すたびにプルプルと揺れてました。

続く