[超能力(師匠シリーズ)]
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「さん」と言い掛けて、思いとどまった。
これはゲームなのだ。所詮、師匠が用意したものだ。
あやうく本気になるところだった。
たぶん、Bを選ばせておいて箱Bは空っぽ、「ホラ、欲をかく
から千円しか手に入らないんだ」と笑う。
そういう趣向なのだろう。
なんだか腹が立ってきた。
AのBだけを選んでおいて、「片方しか選んでないのに、1万円
入ってないぞ」とゴネることも考えた。

しかしBの「両方」を選んでおけば最低でも千円は手に入るのだ
から、次の仕送りまでこれで○千円になって・・・
と、生活臭あふれる思考へと進んでいった。
すると師匠が「困ってるねえ」
と嬉しそうに口を出してきた。
「そこで、一つヒントをあげよう。君がもし、透視能力、もし
 くはテレパシー能力の持ち主だったとしたら、どうする?」
きた。また変な条件が出て来た。
予知能力という仮定の上に、さらに別の仮定を重ねるのだから、
ややこしい話になりそうだった。

そんな顔をしてると、師匠は「簡単簡単」と笑うのだった。
「透視ってのは、ようするに中身を覗くことだろう? だった
ら再現するのは簡単。箱の横っ腹に穴を開けて見れば、立派な
透視能力者だ」
ちょ、そんなズルありですか、と言ったが
「透視能力ってそういうものだから」
そっちがOKなら全然構わない。
「テレパシーの方ならもっと簡単。

入れた本人に聞けばいい。
 頭の中を覗かれた設定で」
なんだかゲームでもなんでもなくなってきた気がする。
「で、僕は超能力者になっていいんですか?」
「いいよぉ。ただし、透視能力か、テレパシーかの2択。
 と言いたいところだけど、テレパシーの方は入れた本人が
 ここにいないから、遠慮してもらおうかな」
本人がいない?
嫌な予感がした。

続く