[つかない筈のテレビ]
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車に戻り暫く道を走ると、従姉妹がため息をついて言った。
「凄いもん見つけたね、あのテレビ」
俺が何のことか分からずにいると、従姉妹は続けて言った。
「さっきまで視線を感じてた。団地からずっと追ってきてたよ、多分あんたがテレビつけたときから」
今更ながら徐々に焦り始める俺を尻目に、従姉妹は言い切った。
「あんな場所に電気が通ってるわけないじゃない。あのまま見てれば、何か面白いものが見れたかもね」
俺が、テレビの内部に蓄電してることもあると言うと、従姉妹は「じゃあ戻って確かめる?」と言った。俺は即座に拒否した。

後日、従姉妹から聞いた話ではやはりあの団地は通電していなかったらしい。あの後ひとりで行って確かめて来たと、小さな常夜灯を指差して言った。それをコンセントに差して確認したのだろう。これにはさすがに呆れた。
しかしその後、従姉妹はもっと驚くことを口にした。
「テレビの電源入れようとしたんだけどね、入らなかった。あんたのときについて、私のときにつかないって、ムカついたから持って帰ってきて分解しちゃった」
そう言って笑う従姉妹の部屋には、確かに見覚えのある赤いプラスチックがあった。


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