[魔のコーナー]
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更に競馬場反対派の仕業説も浮上する。警備員が3コーナーから4コーナー間を
点検すると、使い古しの釘だとか、ガラスの破片などが転がっているのだ。
馬泥棒の仕業という説も浮上する。戦後の食糧難のため、軍馬や競走馬までも
盗んで肉塊に変えてしまう馬泥棒が現れたのである。彼らは馬丁に成りすまし、
厩舎へ忍び込んで馬を盗み、夜中にそれを3コーナーから4コーナー間で殺した。
肉屋に売る分をそぎ取ると、残りの骨などは穴を掘って埋められた。
その殺された馬の怨念が魔のコーナー間から抜け出そうと、栄光の馬の足に取り
ついて、倒してしまうのだ。という説である。どれも本当のようであり、マユツバ
のようでもあったが、確かなことがひとつあった。

スタンドにはいつからか、年老いた60過ぎのお婆さんが現れるようになる。
おてつさんというそのお婆さんは、500円を渡すと一生懸命に拝むのである。
賭け馬が3コーナーから4コーナー間へ入る間、おてつさんが拝んでくれていると、
その馬は決して倒れないのである。
そんなことで、おてつさんは年間に一千万近くも稼ぎ、見事に馬主になったそうである。
おてつさんにとっては地獄の3コーナーは天国の3コーナーであった。


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