[金縛り中に]
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片開きのハズのドアがスライドした。
そして,のぞき込むようにそれの顔と手が見えた。真っ白な顔,長くぼさぼさの髪,
真っ黒で落ちくぼんだかのような目,ひび割れて乾燥した唇,がりがりの指。
部屋は暗いのにやけにクリアに見える。
「ホラーなんて最近見てないのになんだよコレ!?」
夢だろうが現実だろうが入ってきたら拙い。それは明確に解った。
しかし,それはそこにたたずんいるだけで入ってこようとはしなかった。
ただじっと俺を見つめているのだ。
今だ続く圧迫感とじっと見つめる何か。
次第にいらだってきた俺は「もう帰れやっ!!」と罵倒するイメージをたたきつけた。
でも,帰らない。
俺はいい加減怖さも下がり「金縛りとけたらいなくなるのかなー?息つれぇ・・・」
と考えが落ち着きだした。そこで,今まではイメージとしてそれを感じていたのだが,
ここで目で見てみる事にした(玄関からずっと怖くて視線をやれなかったのだ)。
何とか動く視線をそれに向けた時だった。

視線が合った瞬間,おびえるように隠れるそれ。そして・・・
隣の部屋に行きやがった。
「まて,それは明日が怖いだろっ!」そう思っても金縛りは進行形で動けない。
疲れたのか俺はそのまま眠ってしまった。
朝起きてみたものは,閉めたはずの俺の部屋と隣の部屋の扉が開いている光景と。
玄関の扉内側の結露と手形ひとつ。
その後はそんなこともなくて,なんだったんだこれ?

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