[覚えたよ]
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次の日、I先輩は他の3人にその話をした。Kさん以外の2人にも同じことがあったらしい。
Kさんだけが何事も無かったのだ。
『俺、昨夜は何も無かったけど、昨夜からなんか・・・すげぇ気持ちわりぃ』
たしかにその日のKさんは顔色が悪かった。
それからKさんは極端に元気が無くなり、あまりI先輩たちの遊びの誘いにものらなくなった。
しかし特に何があったわけでもなく、Kさんは卒業していった。

それから数年後、大学も卒業し、今の会社に入ったI先輩は当時のことを忘れかけていた。
肝試しのメンバーの1人から連絡がくるまでは。
その人によると、Kさんが体調を崩してここ一年ほど入院しているらしい。
I先輩たちは入院先の病院に見舞いに行ったが、Kさんの様子が少しおかしい。
しきりに何かに怯えている様子で、話をしてもまったく噛み合わないのだ。
家族の話によると、ここ数ヶ月で彼の精神年齢がどんどん逆行しているらしい。
I先輩たちが訪れたときはちょうど中学生くらいだったそうだ。
さらに、常に何者かの視線を感じている、と話しているとか。
大学時代の肝試しのことが、I先輩の頭によぎった。
その数ヵ月後、またI先輩はKさんの見舞いに訪れた。
もうそのときにはKさんの精神年齢は4、5歳くらいにまで逆行していた。
Kさんはしきりに『変なおじいちゃんが笑って見てるの、怖いの、怖いの』と訴えていたそうだ。
それからさらに数ヶ月後、Kさんが亡くなったという連絡が届いた。
もう話すことも食事をすることもままならず、点滴生活の末亡くなったらしい。

I先輩はこの話を俺にしたあと、しみじみと言った。
『Kさん、最期まであのじいさんに見られてたのかなぁ。』

・・・この話聞いてから肝試しなんてできなくなりました。


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