[覚えたよ]
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ズルッズルッズルッズルッ
『待って・・・待って〜・・・あはははははは・・・』

後ろから聞こえる不気味な足音と笑い声。4人は死ぬ思いで車に戻った。
『急げ!早く出せ!』
Kさんが震える手でキーを差込み、エンジンをかけた、そのとき。

『覚えたよ〜・・・』

声がした方に目を向けると先ほどの男が窓ガラスにべったりと顔を当てて車内をのぞいていた。
『うわあああああっ!!』
Kさんはアクセルを思い切り踏み、車は急発進した。
それからどう走って帰ったかははっきり覚えてないらしいが、結局4人は無事に帰宅することができた。

しかし次の日の晩、I先輩の部屋にその男は現れた。
夜、I先輩はロフトの上で床に就いていたが、なかなか寝付けずにいた。
すると下のほうからギシ、ギシ・・・とロフトを登って来る音がしてきた。
『やばい・・・!』
I先輩は目を固く閉じ、身体を強張らせた。『消えてください、お願いします・・・』と心で念じながら。
音はすぐに止んだが、すぐに姿勢を崩すことが出来ず、数分が経った。
『消えたのかな?』

ほっと息をつき、目を開けると、あの男の顔が目の前にあった。
I先輩の上にまたがり、顔の両脇にひじをついてのぞき込むような形だ。
男はI先輩と目が合うと一言『・・・違うなぁ〜』と言って、消えていった。

そのままI先輩は気を失った。

続く