[呪いのピアノ]
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「その制服はね、旧制服だったんだって。私たちのとは肩のあたりの形が違ったらしいよ」
私たちの学校は制服のデザインを十数年前にかえていました。
職員室前の校史年表や、ホームルームでのスライド授業でしか見たことはありませんでしたが、現行の私たちの制服に
良く似たものでした。

「もし生徒が練習してたなら、旧制服なんておかしいでしょ?」
「それこそ見間違えだと思うけど……」
「まあ、そうかも知れないんだけどさあ……」
しばらく私たちはそんな話は嘘だ本当だ、怖い怖くないと言い合っていたのですが、
ぼそりと佐智子(友人の一人です)がつぶやきました。

「みんな結局気になってるんだし、なんなら今から行ってみる?」
そして日も沈む頃、私たちのうち何人かは、音楽室に行くことにしたのです。

音楽室に行ったのは、美紀と佐智子、絵里(こちらも友人の一人です)、そして私の四人でした。
いつもより遅くまで残っていたので、校舎に人影が全く無く、廊下に私たちの足音が響くのが印象的でした。
音楽室の前で皆一旦足を止め、耳を澄ましましたが、ピアノの音は聞こえませんでした。
「開けるよ……」
美紀が扉を静かに開けました。
音楽室には誰もいませんでした。
真っ赤な西日の差し込む教室に、普段私たちが座る椅子と、大きな黒いピアノが一つ、置かれているだけでした。
私たちはしばらく誰も何も喋らず、ぼおっと音楽室の中をみて回っていました。
「結局、何もないじゃない」
「うん……」
絵里のつぶやきに、美紀がうなずきます。

絵里はピアノの前に立ち、鍵盤の蓋をあけ、軽くピアノを弾き始めました。
佐智子と私は椅子に座ってそれを聞き、美紀は窓辺に立って外を見ていました。
と、美紀の方を見たとき、私はどきりとしました。
窓辺に立った美紀は、窓にうっすらと姿が映っていたのですが、その窓に映った姿がまるで血を浴びたようだったのです。
制服は赤黒く濡れ、頭から血を流しているようでした。

西日のせいだとか、そんな風には言えないくらいに、濡れたように生々しい赤でした。
そして、美紀の髪はショートカットだったのに、窓に映った姿は髪の長さがもっとずっとあるように見えました。
さらには、制服の肩のあたりが少し膨らんだ形になっていて……それは私たちの着ているものとは違う、一つ前の制服でした。
「さ、佐智子……!」
隣に座っていた佐智子に、慌てて言おうとしました。しかし、不意に美紀が私の方を振りかえり、言葉が詰まってしまいました。

続く