[仏壇]
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疲れもあってか、晩酌の時の父は面白いほど
酔っ払っていました。

そして、また仏壇の話になりました。
「ありゃなんだろうなあ?」
家族のだれも知りません。

そして、一休みして
疲れもとれた今なら開くかも?
と、よせばいいのに
父と僕は懐中電灯片手に、
再び土蔵へと行ってみました。

昼間とはうって変わって、
夜の土蔵は真っ暗でいやな雰囲気です。
父と僕は、仏壇の扉に手をかけました。
「せーのっ!」
掛け声とともに、
力いっぱい取っ手を引くと・・・

「うわ!」
僕と父は思わずスッ転んでしまいました。
全く抵抗が無く開いたのです。
「なんだよ・・・」
父はぶつぶつ言いながら立ち上がると、
仏壇を覗き込みました。

「ゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!」
「あああああ!!」
奇妙な鳴き声と、
父の悲鳴が一緒に聞こえました。
その時の光景は今でもしっかりと覚えています。
仏壇の中から、妙に干からびた、
爪の伸びた手が2本、
父の頭を抱え込んで、
仏壇の中に引っ張りこもうとしているようでした。

僕は半泣きになりながら、
父に飛びつくと一生懸命引っ張りました。
しばらく、格闘が続いたあと、
急に引っ張る力が無くなり、
僕と父はまたもや尻餅をついてしまいました。
そして、わき目も降らずに家に逃げ帰り、
その日は一睡もできませんでした。

夜遅くまで、あの
「ゲゲゲゲゲゲ!!!!」という、
聞いたこともない声が響いていました。

次の日、恐る恐る家族全員で仏壇を覗きに行くと、
仏壇は扉が全開のままでした。
中にはなにも入っていませんでした。

ただ、仏壇の扉には、
内側からひっかいたような後が、
幾重にもついていました。

いったいあれは、何だったんでしょうか?


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