[初恋]
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その時点で躊躇してしまったけれど、窓のカーテンでも閉まってるんだろう。それを空ければ明るくなると思いそのまま上りきる。 
まず、目に入ったのは埃・埃・埃。すごい厚さ。 
思わずうわぁ〜と声を上げて見回すと、薄暗い部屋の視界に人影が映る。 
女の子? 
髪の長い子でなにかぬいぐるみで遊んでいるようだ。 
本来ならばこの時点でおかしいことこの上無いのだけれど、一時とはいえ慣れた土地を離れ幼馴染たちとも会っておらず友達がいなかったので、ぜひとも声をかけたかった。埃が舞い上がらないように静かにその子に近づいていく。 
ねぇ、なんでこんなところにいるの?なんて声をかけつつ。しかし、彼女は答えない。というよりは、聞こえているけれど、反応しないようにしているような感じ。 
その子に隣にしゃがむ。同い年くらいというのが分かった。 
髪の長い子で、ピンクの熊のぬいぐるみの腕をもちいろいろなポーズをさせて 
いた。 
僕この家に住んでるの。どこから来たの?名前は?など声をかけるが反応が無 
い。 
こうも無視されるとさすがに感じわる〜とか思っていると、彼女がふと顔を上 
げて、こちらを向き、私はめぐみ。って紹介をする。 
どきっとする。彼女があまりにも可愛かった。一目ぼれだったんだろう。たぶ 
んこれが初恋。 
なぜこんなところにいるのかと聞けば、お父さんに怒られて怖いから隠れてい 
るということらしい。 
それからは取り止めの無い話をしていたと思う。でも、彼女を目の前にすっか 
り舞い上がった為、自分の話しかしていなかったと思う。それでも、彼女はう 
なずいたり微笑んだり。 
一階の居間にある時計が時間を告げた時に、祖父がそろそろ帰ってくると思い 
、天井裏に行ったのがばれるので、彼女に別れをつげまた来ることを約束し、 
そのまま一階に降りて階段をしまう。手を振りながら微笑んだ彼女が忘れられ 
ない。(思い出なので美化されてる部分もあるでしょうが) 
が、出す時は紐を引っ張ればいいのだけれど戻すには階段を押し上げる必要が 
あり、いくらダンボールを積み重ねても力がない上、必要な身長もないので戻 
すことが出来なかった。 
このままでは祖父に怒られると思い、ダンボールだけを片付け、紐をしまい、 
少し落ちていた埃を片付ける。そのすぐ後には祖父が帰って来たが、階段が勝 
手に落ちてきたと説明をした。何度もしつこく上には行ってないかと聞かれた 
が、彼女と会えなくなるのが怖かったので嘘をついた。もちろん彼女の話はし 
ない。 
階段が勝手に落ちてきたということではあぶないので。と頑丈に閉められ、引 
き出すための紐は取り外されてしまう。