[まかない後のお楽しみ]

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一人女の子の肩を抱いてにやけている俺にUは言いました。
「振り向くなよ。何があっても」
正直、「ありがちな脅し文句だな」と感じていました。
が、
その瞬間は突如やってきました。
3分は歩いていたでしょうか。従業員用のトイレをすぎた辺りで
「おい!」
といきなり呼び止められたのです。
…聞いた事もない男の声で。
余りの急な事にパニくった俺はあろうことかさっき言われていたにも関わらず、振り向いてしまったのです。

トイレのちょうど前辺り。デパートの生鮮食品売場のドロドロに汚れた制服を着て立っている男。
両目が鬱血して腫れ、飛び出しそうな程に目玉を見開いた恐ろしい形相でした。手には縄跳び用の縄を持っているように見えました。

男はもう一度言います。
「おい………」
低く、くぐもるような声ですが不思議と聞き取りにくいと言う事もなくはっきりと聞こえました。
恐怖で足がすくんでしまい「うぅ」と呻くのが精一杯の俺は隣を歩いていた女の子に引っ張ってもらいやっと外に出る事が出来ました。

外に出るまでの間、目をつぶっていたので様子は分かりませんが、二階の階段を降りる直前まで、男は耳元で囁く程の声で
「おい……」
と言い続けていました。
後日聞いたのか、その場で聞いたのかは忘れましたが、そのデパートで昔ひどいイジメがあり従業員トイレで自殺があったとか。
その話が本当かどうかは確認出来ませんでしたが、俺が見たあの男は確かに言っていました。
「おい…自殺しろ」


その後、その焼肉屋は潰れてしまい、その後どうなったかは分かりません。


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