[継呪の老婆]
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私は、目を覚ました。眩しい光が、私を包んでいた。ふと、暖かい手が、
私の手を握った。視線を上げると、その先には、トモが微笑んでいた。
「おかえり。また会えたね。サト。」トモは、両腕で私を抱きしめてくれた。
私は、涙が止まらなかった。100年の孤独から解放された気持ちだった。
「ゴメンね。そしてありがとう。」トモが言った。周囲に、お婆さんがいた。
ベッコウの髪留めが、老婆の頭を美しく飾っていた。老婆は、トモの部屋で落としたベッコウの髪留めを大切そうに手でなでて、微笑んだ。
よく見ると、
クラタも。その姉も、親も、皆いる。私は、トモを抱き返し、囁いた。
「大丈夫。全部分かったよ・・・。トモ。」私は理解した。もうすぐ、皆、
ここへ来る。ネネもナナも、お父さんも。別れは一寸の間だけ。苦しみと恐怖を経て、最後にはここにたどり着く。
自らを犠牲にし、呪いに対抗した
者は、必ずここにたどり着く。
ふと、父の言葉を思い出した。「親戚も説得したぞ。それに・・・。」そう、
父は言った。「それに、もう生贄選びに苦しむことはないぞ。
歯も舌も、粉に
する。町の食堂で、塩や胡椒に混ぜて誰かに食べてもらうから。10年もすれば全て終わるさ・・・。」私は少し不思議な胸騒ぎを覚えたが、考えがまとまら
なかった。
すぐに、そんなことは忘れてしまった。
自らの意思で犠牲にならなかったものは、永遠に渇きの中をさ迷い、新たな
呪いを引き起こしていく・・・。だから、呪はこれからも続くだろう。しかし、今の私にとっては、あちらの世界の呪いなんて、ちっぽけなことだった。
この場所で、私はみんなと過ごすことができるのだから。 (完・・。)