[7月13日]

まず俺の家なんだけど、かなりの田舎だったりする。一応地主で、うちがドーンとあって、
そこから少し離れたとこに近隣の家がある。で、近隣の家に土地を貸してるんだけど、
田舎だから地代は安い・・・。まあそれは置いといて、俺は他県で働いてたんだけど、
4年前実家に帰ってきて、客間として使われていた離れを改造して住んでる。

俺が住んでる離れは後ろが崖でね、地震の時とかちょっと怖いんだけど、崖の上に小さい
神社もあるし、まあ神様が守ってくれるだろうと。

ここからが本題。俺がこの離れに住み始めてから、毎年ある時期に声が聞こえるようになった。
その声というのが「わー」っていう戦争時の大勢の声みたいなやつで、その後爆弾が
炸裂するような音と同時に、男性の「○○!ここはもうダメだ!」って声が聞こえて、
その後女性の「XXXちゃんどこにいるのー!」という悲痛な声が聞こえて、終わる。

これがもう4年間続いてるわけ。

そして聞こえる時に必ず意識が朦朧とするんだよね。だから最初の2年目は気のせいだと
思ってたんだけど、去年も例の声が聞こえて、今年も聞こえて。で、考えてみたら声が
聞こえるのは去年も今年も同じ日だって事に気付いた。

7月13日。メモっておいたから間違いない。


これはこの部屋に何かあるんじゃないかと。そんなわけで母に聞いてみたのよ。
あの離れ(元客間)には何か曰くでもあるんじゃないかと。

母は何も知らないという。後は親父か祖母か祖父に聞くのがいいんだけど、3人供鬼籍に
入ってるので聞けない。なので独自に調べることにした。

うちには蔵がるんで、中に入ってそれらしき記録がないかと調べてみたんだが無駄骨に終わる。
で、何となく離れを一周してみたら、とんでもないものを見つけてしまった・・・

最初に書いた通り、俺の部屋の後ろは岩壁になってるんで、ピッタリくっついて裏側に隙間なんか
ないと思ってたのに、人がようやく通れるくらいの隙間があった。そして写真のような入り口が・・・
中に入るのが怖いので、とりあえず母を呼んでこれは何だと。

母も初めて見たらしく、ビックリしてた。祖父にも祖母にもこんな空洞があるなんて聞かなかったと。

そんなわけで、怖かったが懐中電灯をぶら下げて中に入ってみたのよ。入り口の狭さに反して、
中は結構広い。しかも深くて、途中で道が曲がってたり。全部で15mくらいはあったように思う。

で、行き止まりまで着いたら、そこにはボロボロになった誰かの服と、かさかさになった
花束?みたいなのが置いてあった。

怖くなったので速攻出る。母に事情を話すと、祖父の妹なら何か知ってるんじゃないかと。
そんなわけで、祖父の妹(2回くらいしか会ったことがない)にアポを取って話を聞きたかったんだけど
入院してると言う。なので退院するまで待った。

そして3日前にようやく話を聞くことができたよ。

もう想像はついてると思うが、俺の部屋の後ろにある洞窟は防空壕だったらしい。
地主ということで、空襲警報が鳴ると近隣の人達がうちに避難してきて、例の洞窟に逃げこんだと。
で、60年前の7月12日、うちの街に大規模な空襲があって、沢山の人が死んだ。

うちの周りでも爆撃があってね、防空壕に避難する前に死んだ人もいるらしい。
そして、例のボロボロになった服と花束に関して聞くと、祖父の妹は悲痛な顔をして

「あれは、あの防空壕で自害した人の洋服よ」と。

1945年の7月12日、ある家族が避難してきたらしいのだが、途中で子供を見失ってしまった。
で、1日防空壕の中で過ごして、我が家に帰る途中、変わり果てた我が子の遺体を発見し、
家は空襲で全壊。生きる術をなくした両親は防空壕に戻り、そこで自害したと。


これは祖父と祖母、そして曾祖父と曾祖母だけの秘密にし、密かに弔ってやったと。
なので、俺はもちろん母が知らないのは当たり前で、言うと気にするから内緒にしてたんだそうだ。

そんなわけで、清酒と花束を持って新たに供養してみたんだけど、来年どうなることやら。

以上。怖くないかも。すまそ。


次の話

Part115menu
top