[赤いコートの女]

携帯からで見にくいかもしれませんが。
私が小学生の時。通学路に橋があって、登下校時はいつもそこを通っていました。ある朝、確か半袖だったから夏だったと思いますが橋の下に、赤いコートを着た女の人が立っていました。
革製の大きなバックを抱えて。続く
続き。その日の帰り、友達二人と下校していた私は例の橋の下について、驚愕しました。
赤いコート。
登校した時と同じように下を向いて立っていたのです。俺は友達の手前走って逃げたかったのを我慢しました。でも俺が近づいても女の人は全く動きませんでした。

しかしもっと驚いたのは次の日の朝も、帰りも、その次の日も女の人は赤いコートで立っていました。
最初は怖かったのですが、あまりに毎日いるのでそのうち馴れてきて、気にすることもなくなりました。
それから一か月くらいたったころ。ある朝女の人が突然いなくなっていました。
あ、いなくなってる。そう思いよく見ると、女の人がいつも持っていたバックが残されていました。
中身がみたい。私はよせばいいのに中身を確かめるためバックに近づいていきました。
あと一回続きます。

私はバックに近付いていきました。ゆっくり、ファスナーを手に取りました。そして素早く開けました。
「……!!」
私は絶句しました。血のコートが入ってるって書かれた方、はずれです。その方がまだ良かった。
中には黄色い、半透明の液体。はちみつでした。バックに直接はちみつが入っていたのです。でも私が絶句したのはそのせいではありません。
カラス。
はちみつの中に、カラスが「漬け込まれていた」のでした。
半透明の液体の中でとろんとした目をしてたゆたうカラス。
…なんで?意味がわからない。
その時です。

ザッザッザッ。
なんで今まで気付かなかったのか?と思うほどすぐ近くで、誰かの足音がしました。
私が(恥ずかしながら)固まっているとそいつは私のすぐ真後ろ、それこそ暖かい息が私の後頭部にかかるくらいの位置に立ち止まりました。
振り替えれない…
するとそいつは私の耳に囁くようにただ一言。
「綿棒貸して下さい」
そこではじめて私は叫び、ひたすら全力で走りました。

話はこれでおしまいです。バックのことも、後ろにいたのがあの女なのかもわかりません。そして、なんでそいつは綿棒を欲しがったのかも謎です。
今となっては何も確かめられません。でも、私の耳にかかった、そいつの生臭くて湿った息だけは今でもはっきり思いだせます。

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