[絵馬]

8年ほど前、オレが専門学校に通っていた頃の話。
そのころは専門学校生で、学校でつるんでる仲間とよく心霊スポットに行ってた。
別に大好きって訳でもなくて、特に行くとこもなくてただドライブしてるだけもつまんないので、
適当な目的地として心霊スポットを選んでるってだけだった。
「うぉ〜怖ぇ〜」とかその場のノリで言ってはみるものの、別に怖いなんて思ったことは一度もなかった。
そんなころ、友達が車を買ったというのでその新車でドライブに行く事になった。
「またKダム行く?」
「もう心霊スポットええよ〜。別に女の子おるわけじゃなし。」
「行くとこないじゃん。米軍基地でも行こうか?」
あらかた近場の心霊スポットは行き尽くしたオレたちは、そんなこと話ながらドライブしてた。
「そういえば!」
と、友達が話はじめた。
「YってとこにS峰ってとこあるらしいんじゃけど、そこなんか怖いらしいで。」
「へぇ、どんないわくがあるん?」
聞くと、なんでもYって場所は縁結びの神様が祭られてる神社があるそうなんだが、
そこである女が好きな男への思いを願いつづけたが、ついぞ叶わず、その神様を呪うという遺書を残して身を投げたとこなんだそうな。
「ええじゃん!行こうや!」
「でも場所がいまいちようわからんわ。Yは分かるけど、S峰って聞いた事ないよ。」
「ええよ、コンビニで聞こw」
別に目的地につけずとも、何か探すっていう目的でよかった。オレら流の遊び方。

Yは少し遠かったけれども、夜は道もすいててそんなに時間はかからなかった。
オレらは適当なコンビニを見つけて、S峰を探すことにした。
友達2人は売り物の地図を広げて、オレは店員に聞いてみた。
「すんません、ここらでS峰って知りません?」
「あぁ、S峰。ありますよ。」
そういって店員は詳しい行き方を教えてくれた。
「そこって神社あります?」
「あぁ、T神社でしょ?今から行くんですか?」
「そうそう、なんか怖いらしいから、、、。」
「怖いですよ。あそこは。」
店員の口ぶりに興味をひかれた。
「え?店員さんもいったことあるの?」
「ええ、絵馬でしょ?」
「絵馬、、、?」

「ええ、絵馬の遺書。」
「ナニそれ?絵馬に遺書が書いてあるんですか?」
「そうですよ、右側のかけるとこの一番下の右から、、、3番目くらいかな?一番奥。でももうさすがにないかな?」
「そこにあるの!?」
「ええ、オレは見たんですけどね。ま、今から行くんでしょ。もし見られなかったら何が書いてあったか教えますよ。大体覚えてるから。帰りもここ通るんでしょ?」
「そんなん見て大丈夫なん?」
「はずしちゃダメらしいですよ。オレはびびってはずせんかった。できたら外してみて下さいよ。」
またまた〜、なんて店員と談笑していると、
「おい、場所わかった?」
と、友達が地図をしまって話しかけてきた。
「おう、店員さんが教えてくれたわ。ついでにおもろい話も。」
「ホンマ?地図載ってなかったーや。分かったんなら行こうや。」
「OK!OK!おもろい話したるけーの!」
ただ出るのは悪かったので、缶コーヒーを一本買って店を後にした。

オレはさっき店員から聞いた話を走る車の中でコーヒーを飲みながら友達に話した。
「それマジで?やばいんじゃないん?」
「まぁはずすまーや。見るだけならええんと。」
「外したらどうなるか知りたいわ。○○ちゃん外してみてや。」
「お前店員と同じ事言よるわw」
そんな話をしながら、店員に教えてもらった通り車を走らせた。
「お、アレじゃないん?」
神社らしきものが見えてきた。そこは結構山を上ったとこで、神社はちょうど頂上付近に建ってるって感じだった。
その辺り一帯がたぶんS峰なんだと思う。
オレ達は車を停め、神社に入ったが、
神社は思ったより奇麗でなんだか拍子抜けしてしまった。

「なんか心霊スポットって感じでもないのー。」
「おぉ、これならW(近所の地名)の神社のがよっぽど怖いで。」
「まぁ、絵馬探してみようや。」
絵馬がかけてある掲示板みたいなものはすぐに見つかった。
幅2メートル弱くらいのものが2つならんでいた。
「右側の一番下の右から2〜3番目、、、」
絵馬は掲示板全体に、ギッシリといった感じでかけられていたが、
店員が言った箇所に目をやるとちょっとおかしい。
「あった?」
「いや、ないけど、、、何コレ?」
右側の掲示板、一番下の一番右。絵馬をかける釘の根元に、なんだか郵便ポストのような、ロッカーのような、
いや、まるでビルの配線やらが入ってて、丸いとこを押して取手を出して開くやつみたいな(わかってもらえるか、、、)。
そんなものが取り付けられていて、蓋に開いた小さな穴を通って釘は打ち付けられていた。
その蓋の両端は耳みたいに取手が出してあって、それぞれ南京錠がしてあった。

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