[坊さんの成れの果て]

お久しぶりです。皆様。
「かんひも」のAです。
>230
ありがとうございます。
でも、さすがに土日のたびに、
母の実家に行くわけにもいかないので・・・
また、何かわかり次第ご報告します。

代わりといってはなんですが・・・
うちの爺ちゃんがらみの話しを一つ、手土産に。

前にお話ししましたとおり、
「かんひも」事件の時までは、
あまり母の実家へは遊びに行かず、
爺ちゃんともそんなに会うことはありませんでした。

しかし、事件後、
ミーハーな僕はあの時の爺ちゃんを格好いいと思ってしまい、
ちょくちょく遊びに行くようになっていました。

中学1年生の夏。
僕と爺ちゃんは二人で県内のキャンプ場へ、
キャンプをしに出かけました。
しかし、わりと有名なキャンプ場だったせいか、
ものすごく混んでいました。
「これじゃ、町におるんと変わらん」と
爺ちゃんが駄々をこねるので、
そこからさらに林道を奥へと入って行きました.

当時、爺ちゃんは65才くらいでしたが、
まだまだ現役バリバリで、
テントや諸々の入ったリュックを一人で担いで、
どんどん奥へと入っていきました。
しばらく行くと、古い木の標識で
「→坊泊(ぼうどまり?)」という看板がありました。
矢印の方へ行くと、ちょっとした川原に出ました。
僕らのほかには、人は誰もおらず、
「きっと坊さんがここに泊まったんじゃのー」
爺ちゃんはご満悦です。

気に入った僕らは、
そこにテントを張ることにしました。

「かんひも」以来、
多少霊感?というようなものが芽生えた僕ですが、
その時は何も感じず、
逆に神聖な雰囲気に、すがすがしい気分を味わっていました。

川で釣りをし、
夕飯にカレーを食べ、
爺ちゃんは晩酌をし、
ゆっくりと夜はふけていきました。
いろいろと学校の話しや、男同士の話しをして、
気が付くと夜の11時を回っていました。

「そろそろ寝るかの」
僕と爺ちゃんは、テントの中に入ると
それぞれ持ってきた寝袋にもぐりこみました。
程よく酔っ払っている爺ちゃんは、
すぐに寝息を立てはじめました。

慣れない山登りで疲れていた僕も、
すぐにウトウトと眠りに落ちていきました。

どのくらい経ったでしょうか?
僕はふと目を覚ましました。
「・・・・・!?」
起きると同時くらいに、背筋にヒヤっとした感じがありました。
首の付け根から、尻にかけて、氷でなでられるような
いやな感触です。
「かんひも」以来、怪異を体験するたびに感じる、
前触れみたいな感触です。

「爺ちゃん、爺ちゃん」
僕は慌てて爺ちゃんを起こそうとしましたが、
酔って寝ているせいか、爺ちゃんは微動だにしません。

「・・・チリン・・・」
そうこうしている内に、外で何か音がしました。
「・・・・・・・・・チリン」
何か、鈴の音のようです。
僕はパニックになりながら、テントの中を見回しました。

「・・・・!!」
その日は煌々と月が光っていて、
外の様子がテントの壁に照らされていました。

テントには、笠をかぶった坊さんでしょうか。
よく、お遍路さんがしているような格好の
影が映っていました。
そしてその影が、テントの周りをゆっくり
回っているのです。
外は砂利なのに、足音はまるでしません・・・。

「やばい、やばい・・・、ちょ、爺ちゃん!」
僕は泣きそうになりながら、
爺ちゃんを起こそうと必死でした。

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