[嫌な感じのマンション]
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新しい引越し先は、これも都内のとあるマンション。
ここで、初めてボクは今日の依頼主と話をしました。
「ご苦労様です・・・・・」
いえ、いえ、スイマセンねえ・・・なんか今日、体調悪くて・・・・
「大丈夫ですか・・・・・?」
ええ・・・今は、もう平気ですよ。
「そうですか・・・・・・」
はい。ん・・・・・・それが、どうかしました?
「いや・・・・あなたは・・・・・」
はあ・・・・・・・・・
「霊感とか強いほうなんですか・・・・?」
霊感・・・・・・・?なんで、また・・・・・・?
「いやね・・・あの部屋、前に自殺があったんですよ・・・・・」
ええっ・・・・・・・・・
「若い女の人らしいんですが・・・・・・」
そんな・・・・・・・・・
「私も知らないで引っ越して来たんです・・・・」

良く見ると依頼主は30歳くらいの男の人だけど酷く痩せていて顔に生気もない。

「でるんですよ。あそこは・・・・・・・」
じょ、冗談やめてくださいよ!!!!
「いや、ホントなんです・・・・このまま居つづけたら私も・・・・・・」
ハイ、ハイ、解りました!作業があるんで失礼しますっ!!!

私も・・・・ってなんだよ・・・・気味悪いなあ・・・もう・・・・

でも、あの部屋はイケナイ。それだけは解る。
さあ、もう早く作業を終わらせて帰ろう。まったく嫌な気分だなあ・・・・・・ それから、しばらくボクはこの話を忘れていました。
引越し屋さんは続けていたけれど、日々の多忙の中で、この日のコトは
記憶のスミッコに押しやられていたみたい。

このことを思い出したのは、それから数年後・・・・ワイドショーを見ていたときです。

「女優Tさん自宅マンションで謎の自殺」

寝転がってTVを眺めていたボクは、ハッとそのとき思い出しました。

あのマンションだ・・・・・・・・・・・

フラッシュバックのようにあの日のコトが鮮明に蘇ってきました。

そうだ・・・・・・あのとき・・・・・・・

あのマンションから引っ越した人が最後に言っていたのは・・・・・・・・・

「このまま居つづけていたら私も・・・・・・・」

私も・・・・・・・・・

「私もいつか引っ張られてましたよ・・・・・・」

あのマンションはまだ都内にあるんでしょうか・・・・・

住所も何も忘れてしまって確かめる術はありませんけど。


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