[教室のロッカー]
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教室内の私たちはその時授業をしていた先生も含めて、叫び声どころかノックの音すら聞こえなかった。
Iがわざと立てた物音以外にはまったくの無音だった。普段ならまだしも、Iが飛び出してくるのを期待して
集中していたにもかかわらず。

幸い、Iはごく軽い怪我ですんだ。
行方不明にも精神病院送りにもならなかった。Iが無事だったおかげで、いじめではなかったことが証明された。
彼は扉に付けられた数個の細長いスリットを通して見ていたのだ、私たちが何もしていないことを。
そして、まったく自分に気づいてくれず、完全に無反応な教室内を間近に見ながら泣き叫び、血が出るまで扉を叩き、
助けを求めていたのだった。




小学校の時に実際にあった話です。
幽霊も宇宙人も変質者も出てきません。それだけに全く解釈の仕様がない不可解で気味の悪い出来事でした。
その後なんとなく話題にするのがはばかられたまま現在に至ります。
人に話すのは初めてです。

それどころか
当時のクラスメイトとでさえ話題にしたことがありませんでした。
数度の同窓会においてもです。
ここに書くことで、今まで胸につかえていたものが少し楽になったような気がします。
ありがとうございました。

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