[教室のロッカー]

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そのうち授業は終わってしまい、起立、礼、着席の号令の後、先生が出て行くのを待って私たちはロッカーの扉を
開けに行った。
「エヘへへ・・」とばかりに頭をかくI あるいは寝息を立てているIを想像していたのだが・・・

ガチャン(扉は単に引っ張れば開く)私たちが目にしたのは、


「ウワアアアアアアアアん!」


張り裂けんばかりに大声でわめく狂ったようなIの姿だった。
真っ赤に泣きはらし、涙、鼻水、よだれでそれこそグシャグシャで
シャツとズボンには血がにじんでいた。

「どうしたんだっ! 何があったんだ?」

ロッカーの中に立っていた彼は崩れ落ちるように四つんばいになって這い出てきた。体中ガクガクと震え立てないようだ。
「@§#&※♂△☆±≒▼∃*」
泣き喚きながら意味不明のことを絶叫している。
よくよく聞いてみると「ドアが開かない」とか「誰も開けてくれない」とか言ってるようだ。

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学校中が大混乱になり、Iは即座に病院に連れていかれた。
先生たちにいろいろ聞かれたが、こっちにもさっぱり訳が分からない。私たちがいじめで閉じ込めたわけではないのだ。
後で分かったのだが、Iは授業開始数分で飛び出すつもりだったという。それまでわざと軽く音を立ててみたりして
いたのだという。
そして「いざ!」という時に扉が開かなくなったのだと。
ロッカーの扉にカギはついていない、回したりひねったりしてロックする構造でもない、押せばしまり、引けば開く
単なるフタの役目しかしていない。

授業も半ばを過ぎるころからIは本気で助けを求めだしたという。
扉を内側からガンガン叩き(これでこぶしを切ったようだ)大声でわめき、つま先でけり続けた。
しかし教室内はまったくの無反応、まったく音に気づく様子はない、授業の様子はロッカーの中にも聞こえてくると
いうのに。
Iはその後助け出されるまで気も狂わんばかりに絶叫しつつ扉を叩き続けたという。

続く