[廃屋のキチガイ婆]

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「廃屋の気狂い婆」3/?
「うわっ、ゴリポン何持ってるんだよ!?」モリケンが神経質な悲鳴をあげます。
反対にイトウは平然とゴリポンに歩み寄り、彼の手から「歯」を奪いました。
「これ入れ歯だ。年寄りがいたんだなここ」「ゴリポンこれどこにあった?」
「流しにあったんやけど」そう言うゴリポンに、イトウはちょっと考えるような
顔つきになりました。「昨日はこんなものなかったよな」そうヨウちゃんに問うと
「うん。こんな変なもの絶対無かったよ」そうヨウちゃんもきっぱりと言います。
「年寄りが来とるんやったら見つかったらめっさ怒られるで!」ゴリポン大慌て。
「俺帰る!」「俺も!いちぬけたー!」「にーぬけた!」ゴリポン、モリケンに
賛同するように、私も名乗りを挙げて、年寄りに会う前にそこを出て行こうとしました。
ヨウちゃんが何か言いかけて、私達三人が入り口のドアを開けた瞬間です。
手に山刀と、何か狩って来たと思われる小動物を携えた、気味の悪い婆がいました。
あまりに唐突な遭遇とその婆の凄いインパクトに、私達は声をあげて叫ぶことも、
その場から動くことすらできませんでした。私達が何も出来ず馬鹿みたいに突っ立って
ただ婆を見つめているだけの状態が数秒続き、婆の唇がゆっくりと動きました。

「クソガキども」

「ぶち殺すよ」

「廃屋の気狂い婆」4/5
「クソガキども」「ぶち殺すよ」
婆はそう呟くやいなや、手にしていた山刀を一番近くにいたゴリポンに振り下ろしました。
ゴリポンのタンクトップからのぞいていた剥き出しの肩口に、ぱぁっと赤い筋が走りました。
そして次の瞬間、たぷっ、とぷっ、と凄い勢いで血が流れ出しました。「う、うわぁぁぁ!」
痛みより恐怖の方が大きかったのか、ゴリポンは傷口を押さえて一目散にダッシュ。
私も何が何やら分からないままに一目散に走って逃げました。
(何なんだ、何なんだよ!?)
心の中で自問自答する余裕が出来た時には、基地からずいぶんと離れた所に一緒にいました。
「ゴリポン大丈夫なんか!」モリケンと一緒にゴリポンに駆け寄ります。
「う、うん。痛いけど大丈夫やー」少ししてイトウがやって来て草をゴリポンに渡しました。
「ヨモギ。これで傷口押さえとくといい」そして私達の顔ぶれを見てイトウが一言、
「ヨウちゃんどうした?」
ヨウちゃんだけ基地から逃げ遅れていたのです……。

次で最後ですが、ヨウちゃんから聞いた後日談という形になります。またマターリしてる時に。

続く